急速に注目度が高まるRPAだが、企業経営者としてRPAをどう位置付け、どう対応していけば良いのだろうか。早くからRPAに注目して調査研究をしてきた三菱総研の百瀬公朗氏とUiPath代表取締役CEOの長谷川康一氏が、「これまでのRPA、今のRPA、そしてこれからのRPA」について語り合った。
日本企業の狙いはサービスレベルの向上にある
百瀬:よくRPAの先進的な活用事例を教えて欲しいと言われますが、RPAはプラットフォームになる汎用的なツールです。1つの業務ではなく、様々な業務に活用できます。しかも複数の業務をまたがって使うことも珍しくありません。何をもって先進的というのかが問題です。
先進事例の定義が日本と海外では違ってくると感じています。海外の企業にとって先進的な事例とは、どれだけ人員を削減したかに偏っています。海外のRPAツールの中では明らかにそれを狙っていると思われるものが多い。しかし、日本はちょっと事情が違います。そもそも労働人口は減りつつあるわけです。
長谷川:そうですね。コスト的な優位性を保つことは勿論ですが、日本の企業が求めているのは、人が減る中でどうサービスレベルを確保するかということです。お客様からの問い合わせに、いかに早く応答するのか、いかにきめ細かいフォローをするのか。そのためにRPAを活用したいという声も多いですね。また社員にはもっと創造的な仕事をして欲しい、付加価値を上げて欲しいと心から期待している経営者も多いと思います。
百瀬:日本の先進的というのは、包括的ということなんだと思います。時間や人手が足りないところをRPAで補い、またそのことで人財の戦略的活用ができるのであれば先進的と言えるのではないでしょうか。
長谷川:そう言われると、確かに日本のRPAプロジェクトはその企業の次の世代のリーダー的な人が担当するケースが多いですね。企業としての未来をRPAによって切り開こうとしているからだと思います。短期的なコストの追求だけでなく顧客中心の観点、人財の戦略的活用という観点からRPAを使っていこうという姿勢の現れですね。
RPAは品質を下げることなく生産性を高める
百瀬:RPAが使われることは、日本の企業のホワイトカラーにとって大変大きな意味を持つと思います。日本企業は業務の品質を担保するために、完全性、網羅性にこだわってきました。実はこうした日本のカルチャーとも言うべき完璧主義がホワイトカラーの生産性の向上を阻んできた大きな要因でした。
企業活動がシステム化されて、詳細なデータが取れるようになって、さらにそれに拍車がかかってきました。より完璧に仕事を遂行して品質を上げるためには、どうしてもホワイトカラーに負荷がかかっていたのです。
しかし、RPAは違います。ホワイトカラーの生産性の足枷となっていた完全性や網羅性の部分をRPAに大幅に委ねることで、生産性を上げることができます。品質を下げることなく、生産性を向上させることが出来る初めての道具なのです。
長谷川:海外では当初は単純な人員削減のための労働力として、RPAが注目されていました。今は海外および日本の先進企業にとってはヒューマンキャピタルという企業の貴重な資産を活かすための道具として捉えられています。ホワイトカラーの仕事をより創造的なものに向け、システムに任せられる業務はその活用により人間の負担を軽減する。それがRPAだという言い方もできますね。RPAによる代替ではなくRPAとの協業です。その意味での先進的な取り組みはすでに始まっていると感じています。
百瀬:RPAによって企業システムの姿自体も変わっていくと思っています。例えば、ERPは優れたシステムですが、データを入力することが前提になっていて、人がデータを入力しなければなりませんでした。でもこれからは違います。RPAがERPにデータを入力してくれるようになります。
長谷川:これまで無理だと思われていた細かなデータを収集しビジネスに反映させることもできるようになりますね。例えば、RPAによって、外部の気象データを1時間ごとに取り込んで、1,000店舗の商品の売上状況とリアルタイムに付き合わせることで、売れ筋死に筋を細かく把握して、各店舗の品揃えに反映させることで、機会損失を防ぐこともできます。極端に言えば、1時間ではなく1分ごとに見直しをかけることも、RPAなら簡単です。あっという間に処理してしまうわけですから。それにAIを連動させることで、ある程度の判断まで機械に任せてしまって、肝心なところだけ人が判断すればよくなります。ビジネスの競争条件を変えてしまうインパクトを持っているのがRPAです。
RPAがこれからの企業のデジタルインフラに
百瀬:その意味でRPAはIoTやAI、ビッグデータといったITの本当の価値を引き出すインフラとして位置付けることもできますね。IoTが普及して、膨大なデータがリアルタイムに収集できても、人手では処理できないし、きちんと対応することもできません。でもRPAによりデジタルインフラが整備され、それにAIが組み合わされれば、そのデータをビジネスに活かすことができるようになります。
RPAは企業にとってコスト削減のツールではなく、業務のやり方を変えるシステム技術であり、競争力を強化するための経営基盤なのです。
例えば、これまで人手でやっていた情報の加工や顧客への問い合わせなどをRPAによるデジタルインフラ上で自動的に処理してしまうことで、他社より一歩リードしたところからビジネスをスタートさせることができます。その時点でライバルに対する競争優位が確立されるわけです。しかも大規模なシステム開発は必要ありません。既存のシステムを活用してできてしまいます。
長谷川:これから人材が減っていく日本では、RPAを駆使すれば様々なビジネスの可能性が拡がり、それが企業にとっての差別化要因になります。RPAは企業の競争優位にダイレクトに影響を与えるツールであり、システムの活用方法を変えてしまうツールでもあるのです。
UiPathはシステムをつなぎ、先進技術を取り込むにはうってつけのRPAです。すでに従業員の時間の創出のためにUiPathを導入して、収益の向上や創造力の強化、モチベーションアップを進めている先進企業も出てきています。
こうした先進的な取り組みをやっている企業とやっていない企業では、当然、大きな差が生じてきますし、もう成果も上がっています。この流れは止められません。さらに加速度を増していきます。UiPathがそのエンジンになっていることを大変嬉しく思っています。
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