急速に注目度が高まるRPAだが、企業経営者としてRPAをどう位置付け、どう対応していけば良いのだろうか。早くからRPAに注目して調査研究をしてきた三菱総研の百瀬公朗氏とUiPath代表取締役CEOの長谷川康一氏が、「これまでのRPA、今のRPA、そしてこれからのRPA」について語り合った。
圧倒的な効果を目にしてRPAの世界に
長谷川:早くからRPAに注目されていたということですが、きっかけはなんだったのでしょうか。
百瀬:2016年の9月ごろだったと思います。アクセンチュアがRPAを活用して、インドのBPOの人員を7,000名削減したという記事を目 にしました。それほどのインパクトをもたらす技術とは一体どんなものなのか興味を持ちました。ただ、労働者の数を削減するための技術が、日本企業にすんなりと受け入れられるのかというのは疑問もありました。そこでどんな技術なのかきちんと調べてみようと考えたのです。
UiPath株式会社 代表取締役CEO 長谷川 康一氏長谷川:調べてみてどんな印象を持たれたのでしょうか。
百瀬:RPAの“R”はロボットのことですが、その言葉が誤解を生んでいる原因だと思いましたね。ロボットというと自律的に動く機械をイメージしますが、RPAは人が規定したことしか実行しません。勝手に動き回るわけではないのです。
RPAは人の代わりになるロボットではなく、あくまでもシステムです。だからこそ、企業としてきちんと位置付けて導入すれば、大きな成果が上がるはずだと考えています。長谷川さんはどうだったのですか?
長谷川:私がRPAを知ったのは、前職でアジアのCIOをしていた時です。グローバルのアウトソーシング部門の責任者も兼ねていました。そこでは既にRPAを導入していたのです。
それまでもRPAのことは聞いていたのですが、実際に触ってみてその圧倒的な効果に驚きました。そこでこのテクノロジーに自分のキャリアを賭けて、日本の生産性を高めるのに貢献する仕事をしたいと考えるようになったのです。やはり2016年の頃の話です。その後、縁あってUiPathの日本法人の代表を引き受けました。
RPAの活用領域は働き方改革だけではない
百瀬:UiPathを選んだのは慧眼だと思いますよ。システムとしてRPAをきちんと活用するには、UiPathのように、未来のビジネスがどうなっていくべきか、そこではどんなシステムが求められるかというフィロソフィーが必要です。日本のRPAベンダーにはそれがないと思うのです。
長谷川:UiPathの社名の由来は、ユーザインタフェースをパスで繋ぐという意味です。そこにはしっかりしたフィロソフィーがあるのですね。どのシステムでもユーザインタフェースを持っていますが、それを繋ぐ存在であるということを宣言しているわけです。
百瀬:以前は選択肢が少なかったこともあって、最初の頃にRPAを導入した企業はツールをセレクションすることなく、手に入るRPAツールを導入して、そのツールができる業務を選んでRPA化していました。
三菱総合研究所 コンサルティング部門 副部門長 百瀬公朗氏長谷川:しかし、それでは企業経営にそれほど大きなインパクトをもたらすことはできません。今では、ツールの選択肢の幅が広がったことで、業務改革やデジタルトランスフォーメーションの課題を解決するためにRPAが活用されるようになりつつあると感じています。また、世界でも注目される先進的ユーザのケースが日本でも出てきており、国内でのRPAの普及を望むユーザーによる積極的な情報の開示も進みつつあります。
百瀬:確かにこれまでは業務改革とか働き方改革とかのトレンドを受けて、人に特化した業務をRPAにやらせるという発想がメインでした。ただそこには企業全体の効率化や競争力の強化をRPAで実現するという視点が欠落していると思うのです。実際にRPAのビジネスをされていてどんな目的でRPAが注目されていると感じますか。
長谷川:RPAは3つの観点から注目されています。1つは働き方改革やデジタルトランスフォーメーションといった経営課題に対するソリューションとしてです。経営企画やデジタル戦略部門、業務推進担当といった人たちがドライバーになっています。
もう1つはCIOサイドからの観点です。CIOが持っているIT予算のオプションの一つとして捉えて、他のテクノロジーとのベストミックスで効果を出そうというアプローチです。最近では「RPAの活用も考える」とおっしゃるCIOも多く、既存のシステム資産を活用する目的での引き合いが増えています。
そして3つ目がプラットフォームとしてのRPAです。ERPやマイクロソフトのオフィスツールのように、RPAを経営基盤プラットフォームと位置付けて、、RPAを中核として既存のメインフレームやクライアントサーバー型の基幹システム間での連携、さらには既存の基幹システムと最新のFintechやエマージングテクノロジーとの連携が期待されます。既にAPIを通じてのAIとの融合も始まっています。
現場による自動化取り組みがカギ。現場に神宿る
百瀬:経営基盤プラットフォームとして普及するためには使いやすさが重要になりますね。現場の人が使いこなせなければ、広がりませんし、プラットフォームにもなり得ません。
長谷川:私はRPAに必要な機能は4つあると考えています。1つが目です。コンピュータビジョンといっていますが、ソフトウェアがあたかも人の目のように、画面上の情報を認識することです。エクセル、Web、仮想デスクトップのアプリケーションやメインフレームでも同じように認識できなければ、RPAとしてできることが限られてしまいます。
2つ目は、エンドユーザでもRPAを使って自動化できる、直感的なインターフェイスと使いやすい部品化された機能です。最初は習熟した人がロボットを作る必要があるかもしれませんが、それを手本に誰もがロボットを作れるようにならなければ圧倒的な広がりは起こりません。
中坊公平さんが“現場に神が宿る”と言っているように、現場にこそ物事の本質があり、思いがけない使い方は現場から生まれるものです。だから現場で使われてこそ本当の価値が生まれるのです。
百瀬:現場の自動化や効率化が実現されてこそ、そこから様々なアイデアも生まれてきます。そのためには、現場の人が使ってよかったと思える、使いやすい道具である必要があります。
長谷川:そして3つ目は、スモールスタートから大規模なシステムまで一貫してサポートできることです。RPAは新しい分野ですから、いきなり全社で導入というのはリスクが大きい。そこで小さく始めるケースが多いのですが、それがそのままスケールできるようになっていることが必要です。
百瀬:RPAの使い方には会社のカルチャーが出ますね。1つの方法論では対応できません。
長谷川:私も同感です。会社が持っている制度、業務、システムなどによって、RPAの使い方は変わってきます。だからこそスモールスタートで始めて、成功体験を積んだエンドユーザが広めていくというスタイルが必要です。
スケールできなければ実証実験で終わってしまいます。そのままスケールできるということは先の展開を見通した場合に、重要な要素になりますね。
求められている機能の4つ目はAPIによる拡張性です。高度化への柔軟性と言い換えることもできます。AIやBPM、OCRなど別のテクノロジーと連携できるAPIが揃っていれば、連携先の進化に合わせて、RPAも進化することができます。
百瀬:まさにそれがシステムとしてのRPAの最も重要なポイントです。RPAは重要な経営基盤になると思います。
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