IDC Japanは2018年9月25日、国内の企業向けITインフラ市場における「アクセラレーテッドコンピューティング(Accelerated Computing)」分野の予測を発表した。アクセラレーテッドコンピューティングはAIやマシンラーニング、ディープラーニング、ビッグデータ分析などで要求される高度な演算性能を、一般的なCPU以外で実現する技術/手法を指し、GPUやFPGAなどが該当する。IDCはアクセラレーテッドコンピューティング分野が、2022年には978億2300万円の市場規模に達すると予測している。
IDC Japanは、エンタープライズインフラ(企業向けITインフラ)市場において、特定の計算処理を、一般的なCPU以外の技術を用いて(CPUのオフロード)高速に実行するアプローチを、アクセラレーテッドコンピューティングと定義している。
アクセラレーテッドコンピューティングの主な調査対象は、GPU(Graphics Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)といった、現在の市場で標準的なx86プロセッサーではない演算装置/アクセラレーターを搭載したサーバーと、そのサーバーに接続される外付型ストレージである。IDCによると、アクセラレーテッドコンピューティング分野は、2017年~2022年に年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)13.2%で成長し、2022年の市場規模は978億2300万円に達すると予測している(図1)。
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「特定のワークロードの計算需要が、CPUの計算性能向上のペースに比べて急速に高まり、処理性能のギャップが顕在化したため、この解消のために採用が増えている。AIやIoT向けでは、一般的なCPUだけを計算に用いるサーバーと比べ、高密度な配置と高い電力性能を実現する可能性が高いことから、国内エンタープライズインフラ市場における重要な成長分野になる」とIDCでは予測している。
国内エンタープライズインフラ市場に占めるアクセラレーテッドコンピューティングの割合は、2017年の7.8%から2022年の16.8%へ大幅に拡大し、約6分の1を占めると予測している。また、配備モデル別に見ると、プライベートクラウドを含むクラウド向けの支出額のCAGRが16.5%、クラウド以外のCAGRが12.0%と予測。AIやIoTなどの新しいワークロードは比較的多くクラウドに配備され、科学技術計算に代表される従来のワークロードはクラウド以外に配備される傾向があると同社は見ている。
アクセラレーテッドコンピューティングは、これまでプロセッサーの処理速度向上を支えてきた半導体設計プロセスの微細化(ムーアの法則)だけに拠らない計算性能の向上を実現していくものであるとIDCは説明。需要のある計算の種類や扱うデータが多様化することによって、新たな技術によるシェア獲得の機会が増えていくとしている。
「GPUやFPGAに加えて、国内資本のベンダーによる新たな技術に基づく製品やサービスも市場へ投入されている。普及を進めるにあたっては製品開発のみならず、対応ソフトウェアの開発に加え、導入や利用を支援するベンダー内外の体制構築が必要になる」(同社)
IDC Japan エンタープライズインフラストラクチャ マーケットアナリストの加藤慎也氏は、「AI向けの計算需要の拡大に伴い、科学技術計算を中心に発展してきたアクセラレーテッドコンピューティングがエンタープライズインフラ市場の成長に貢献していく。アクセラレーターには大きな可能性がある一方、新技術の乱立により、採用する側の企業において自ら適切な技術を選択することが困難になる可能性がある。ベンダーは、提供するアクセラレーターの種類の多さや製品技術の優位性を訴求することはもちろんだが、あわせてユーザーが選びやすいソリューションとしての提供形態を整えるべきである。そのためにも、早期のエコシステムの構築が求められる」と説明している。
今回の発表はIDC Japanが発行したレポート「国内SoE/SoI向けエンタープライズインフラ市場 アクセラレーテッドコンピューティング予測、2018年~2022年」(JPJ42923818)にその詳細が報告されている。同レポートでは、SoE(Systems of Engagement)/SoI(Systems of Insight)向けのアクセラレーテッドコンピューティングにおける支出額の予測も行っている。