NECは2018年10月11日、工場の現場などで使う、無線通信機能を備えたマイク一体型イヤホン(ヒアラブルデバイス)の活用領域を拡大する2つの技術を新たに開発したと発表した。(1)体温や脈拍や活動量などから装着者の体調を監視する「バイタルセンシング技術」と、(2)現場の騒音下でも発話内容をクリアに通話相手に届ける「ノイズキャンセル技術」である。
NECは、マイク一体型イヤホン(ヒアラブルデバイス)を製品化しており、活用するための技術を開発している。これまでにも、生体認証技術の1つで人間の耳穴の形状によって決まる音の反響を利用する「耳音響認証技術」や、電子コンパス(地磁気センサー)を利用して屋内の位置情報を測位する「屋内位置測位技術」、モーションセンサーを活用して顔の向きに関係なく音源を任意の位置で固定する「音響AR技術」、などを開発してきた。
![図1:バイタルセンシング技術の概要(出典:NEC)](/mwimgs/a/3/500/img_a3144f72a72987938eeeef91c057530345230.jpg)
ヒアラブルデバイスの活用例として今回新たに開発した技術の1つが、(1)体温や脈拍や活動量などから装着者の体調を監視する「バイタルセンシング技術」である。9軸モーションセンサーで活動量や姿勢を、温度センサーで体温を、光学センサーで脈拍を測定する。現場作業員の体調や状況を監視し、熱中症対策や現場環境の改善に活用できる。
新たに開発したもう1つの技術が、(2)現場の騒音下でも発話内容をクリアに通話相手に届ける「ノイズキャンセル技術」である。工事現場や駅のホームなどの騒音下でも音声を伝えることができるという。通話相手に発話音声をクリアに伝える用途や、音声を使って機器を操作する用途などに向く。
![図2:ノイズキャンセル技術の概要(出典:NEC)](/mwimgs/3/7/500/img_3788fe1b44817927038de6867896008642423.jpg)
騒音を取り除いて発話音声だけを抽出する仕組みとして、耳内部のマイクと外部のマイクの2つのマイクを利用する。まず、デバイス装着者の発話音声を、外部の騒音の影響を受けにくい耳内部に面したマイクで取得する。発話音声に混入する騒音成分は、耳外部に面したマイクで拾った騒音をフィルタ処理して生成した擬似騒音成分を用いて打ち消す。
NECは今回、既存のイヤホン型ヒアラブルデバイスに加え、今回新しく開発した2つの技術を搭載したネックバンド型ヒアラブルデバイスを実証実験用に開発した。現場で長時間利用できるように、電池の搭載や落下防止に配慮したデザインを採用した。工場や現場作業などで利用できる。
![写真1:ネックバンド型ヒアラブルデバイスの外観(出典:NEC)](/mwimgs/d/6/400/img_d6ff06df91be7362d0e101a119def01b54342.jpg)
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2019年度にサービスを提供する予定である。耳音響技術による個人認証、温度や脈などのバイタルセンシング、地磁気などによる屋内位置測位情報など、ヒアラブルの各種の技術を、基盤サービスとしてまとめて開始する。