[松岡功が選ぶ“見逃せない”ニュース]

2018年10月の3本:IBMがレッドハットを買収/デルとSAPが中堅企業向けERPで協業/NEC、日立、富士通がセキュリティ分野で協力

2018年11月6日(火)松岡 功(ジャーナリスト)

2018年10月のニュースから松岡功が選んだのは、「IBMがレッドハットを買収」「デルとSAPが中堅企業向けERPで協業」「NEC、日立、富士通がセキュリティ分野で協力」の3本である。“見逃せない”理由と共に、それぞれのニュースのポイントをお伝えする。

IBMがレッドハットを買収

 米IBMは2018年10月28日(米国時間)、ソフトウェアベンダー大手の米レッドハット(Red Hat)を総額340億ドル(約3兆8000億円)で買収すると発表した。IBMにとって過去最大規模の買収額となる。買収は2019年下半期に完了する見通しだ(関連記事:米IBMが米レッドハットを340億ドルで買収へ、過去最大の投資でOSS/クラウド戦略を加速)。

写真1:IBMのジニー・ロメッティ会長兼社長兼CEO(右)とレッドハットのジム・ホワイトハースト社長兼CEO(写真提供:日本IBM)

 両社の発表リリースによると、タイトルに「クラウド業界を一変させ、世界一のハイブリッドクラウドプロバイダーに」と銘打ち、「クラウドへのオープンなアプローチを提供し、過去に類を見ないセキュリティと可搬性をマルチクラウド環境全体で実現する」としている。(写真1

 Red Hatが提供するオープンソースソフトウェア(OSS)製品は、特定のベンダーに依存しないオープンな開発コミュニティ活動に基づいており、最近ではクラウド市場での存在感も増してきている。

 基盤となる製品はOSのLinuxで、これまでに多くのITベンダーとパートナー関係を構築してきている。OSSであるLinuxはオンプレミスのエンタープライズシステムのおよそ3割に使われ、そのうち8割ほどがRed Hat製品とも言われている。

 IBMにとって今回の買収は、そうしたRed Hatの顧客企業を手に入れたことが直接的な収穫となる。さらに、それらの顧客企業の多くがこれからクラウド環境へ移行するポテンシャルがあることが、IBMから見たRed Hatの大きな魅力であり、買収に動き出した最大の思惑だと見てとれる。

[選択理由]

 巨額の買収で、IT業界の勢力図にも影響を与える動きとみられるからだ。

 発表リリースで「クラウド業界を一変させる」とぶち上げているのは、おそらく「土俵を変える」ということではないか。つまり、クラウドといえば、これまでパブリッククラウドに注目が集まっていたが、これから主流になるのはハイブリッドクラウドだという主張である。

 もっと言えば、「パブリッククラウドサービスもやっているハイブリッドクラウドプロバイダー」というのが、Red Hatを買収するIBMの世界一を目指す立ち位置ということだろう。その意味では、IBMにとって「土俵を変える」ことによって、クラウドサービス分野でシェアトップをひた走る、Amazon Web Services(AWS)を追撃するための戦略でもあることは明白だ。

デルとSAPが中堅企業向けERPで協業

 デル・EMCジャパン(Dell EMC)は2018年10月10日、SAPジャパンと中堅企業向けERPビジネスで協業すると発表した。Dell EMCがSAP ERP向け基盤ソリューションを提供し、SAPジャパンおよび中堅企業に実績があるSAPパートナーとの連携によってビジネス展開していこうというのが、協業の内容である。なお、ここで言う中堅企業とは、従業員数100人から1000人未満を指す(この従業員数は、一般には「中小企業」のレンジであるが)。

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