2019年6月の3本:SalesforceがTableauを買収/日本IBMとワークデイがリセラー契約/日本マイクロソフトが新パートナー施策
2019年7月10日(水)松岡 功(ジャーナリスト)
2019年6月のニュースから松岡功が選んだのは、「SalesforceがBI大手のTableauを買収へ」「日本IBMとワークデイがリセラー契約を締結」「日本マイクロソフトが新たなパートナー施策を展開」の3本である。“見逃せない”理由と共に、それぞれのニュースのポイントをお伝えする。
SalesforceがBI大手のTableauを買収へ
米Salesforce.comは2019年6月10日(米国時間)、BI(ビジネスインテリジェンス)ソフトウェア大手の米Tableau Softwareを買収すると発表した。買収額は157億ドル(約1兆7000億円)。買収手続きは2019年10月末までに完了する予定だ。
Salesforceの創業者で共同最高経営責任者(CEO)のマーク・ベニオフ氏はこの発表にあたり、「われわれは世界で共にナンバーワンのCRM(顧客関係管理)とアナリティクスプラットフォームを1つにしようとしている」と述べた。
加えて、上記の発表の4日前には、Googleが同じ分野の成長株であるLookerを買収すると発表した。買収額は26億ドル(約2800億円)。買収手続きは2019年後半に完了する予定だ。
Google CEOのサンダー・ピチャイ氏はこの発表にあたり、「LookerをGoogle Cloudに迎え入れることを嬉しく思う。協力してお客さまが課題を解決できるように支援していきたい」と述べた。
[選定理由]
SalesforceのTableau買収は、IT分野では規模が大きくチェックしておく必要がある。さらにGoogleのLooker買収も合わせて、BIソフトの注目度が高まってきたことを象徴する動きだからだ(関連記事:拡張アナリティクス、アナリティクスハブ、グラフ分析─次に来るBI/アナリティクス技術は?)。
BIソフトの主流はかつての「エンタープライズBI」から、今では「セルフサービスBI」に変わっている。
エンタープライズBIソフトは、経営の意思決定を支援することを目的にIT部門が運用していた。それに対し、企業のビジネスにおいて意思決定を行うのは経営サイドだけではなく、例えば中間管理職者も自らが率いる部門で業務効率を最大化するために、さまざまな局面で意思決定を行わなければならないケースが多々あるとの考え方が浸透してきた。
そこで登場してきたのが、文字どおりエンドユーザー自身でデータ分析やレポートの作成を行うセルフサービスBIだ。そして、そのベンダーの代表格が、Salesforceが買収するTableauである。
こうしたことを踏まえた上で、今回の買収劇は何を意味しているのか。クラウドサービスベンダーがセルフサービスBIソフトベンダーを買収して推進しようとしているのは、ユーザー企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援することである。セルフサービスBIは企業におけるDXの取り組みにおいて、データ分析を行うアナリティクスプラットフォームとしてますます重要な役割を担うことになりそうだ。
日本IBMとワークデイがリセラー契約を締結
日本IBMとワークデイは2019年6月25日、ワークデイのSaaSサービス「Workday Human Capital Management(HCM)」の国内販売でリセラー(再販)契約を結んだと発表した。日本国内でワークデイと再販契約を結ぶのは日本IBMが初めてとなる。
発表会に臨んだ日本IBM 執行役員グローバル・ビジネス・サービス(GBS)事業本部クラウドアプリケーション・イノベーション担当の我妻三佳氏は、「今回の契約によって、当社はWorkday HCMを販売するだけでなく、人事をはじめとしたデジタル変革に向けたコンサルティングからシステム構築、サポートまでをワンストップサービスとして提供できるようになった」と述べた。
また、ワークデイ 社長執行役員の鍛冶屋清二氏も「Workday HCMをワンストップサービスで提供してほしいというお客さまのニーズに応え、今回の契約で日本IBMにその役目を担っていただけるようになり、たいへん心強く思っている」と、再販契約の意義を語った(関連記事:DX推進に不可欠な人事評価ルールの見直し、“社員エンゲージメント”に着目を)(写真1)。
●Next:日本のHCM市場のポテンシャルは?
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