[市場動向]
AIで保育所の割り当てを自動化、8000人の入所選考を数秒で─富士通
2018年11月12日(月)日川 佳三、杉田 悟(IT Leaders編集部)
富士通は2018年11月12日、児童の保育所の割り当てを自動化できる自治体向けソフトウェア「FUJITSU 公共ソリューション MICJET MISALIO 子ども子育て支援V1 保育所AI入所選考」を発表し、同日に提供を開始した。同社のAI技術「Zinrai」の数理技術を活用し、千人規模の児童の保育所割り当てを数秒で行えるとしている。価格は個別見積もり。販売目標として、2020年度末(2021年3月期)までに関連事業で累計約20億円を掲げている。
申請者と自治体の双方で深刻化する待機児童問題
都市部の待機児童が社会問題化して久しい。自治体では公平性を保つために、公共保育所の入所選考業務が複雑化している。例えば、「別々の保育所でもよいが、きょうだいの中で1人しか入れないのなら辞退する」といった申請者のさまざまな事情を考慮したうえで、限られた入所枠に割り当てる作業に多くの人手と時間を要している。
自治体では、両親の勤務状況や保育状況、介護の有無などの条件から、より保育を必要とする人を算出する、自治体が個別に定めた「保育所利用調整指数」のほか、希望施設やきょうだいの入所希望など申請者の要望、施設の空き定員情報などさまざまな要因から、保育所の割り当てを人手で試行錯誤を繰り返しながら行っている自治体が多い。特に人口規模の大きな自治体では職員の負担が大きくなっている。
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富士通が今回開発したソフトウェア「FUJITSU 公共ソリューション MICJET MISALIO 子ども子育て支援V1 保育所AI入所選考」(図1)は、ゲーム理論と呼ぶ、利害が一致しない人々の関係を合理的に解決する数理手法を応用した。優先順位に沿って、極力全員が高い希望をかなえられるような千人規模の割り当てを数秒で導き出すとしている。この手法は同社のAIソフトウェア「Zinrai」に備わる手法の1つであり、今回のソリューションに応用されたかたちだ。
MICJET MISALIOを利用した入所選考の流れを示そう。まず、児童ごとの情報(保育所利用調整指数、希望施設、きょうだいの入所希望など)や保育所の空き定員情報など入所選考に必要な情報を、既存のシステムから抽出して取り込む。
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