軽量で高速なオープンソースのWebサーバーソフトウェア「Nginx」(エンジンエックス)を開発している米Nginx。同社は2019年2月7日、日本に東京オフィスを開設すると発表した。同ソフトの商用版についてアジア地域の販売拡大を狙う。国内では、2014年に販売代理店を介して商用版の提供を開始してから採用Webサイト数は1000%増えており、JPドメインの30%弱が利用しているという。東京オフィスの俗称はエンジンエックス・ジャパンで、カントリーマネージャーは中島健氏。
米Nginxは、軽量・高速が特徴のWebサーバーソフトウェア「NGINX Plus」を販売しているベンダーである。NGINX Plusは、オープンソースソフトウェアの「Nginx」の商用版にあたる。さらに、NGINX Plusとは別の製品として、Webアプリケーションサーバー向けのWebサーバーソフト「NGINX Unit」も販売している。NGINX製品の監視やポリシー管理などを司る管理ソフト「NGINX Controller」もある。
今回、アジア地域の販売拡大を狙い、日本に東京オフィスを開設した。カントリーマネージャーには中島健氏が就任した(写真1)。現在4人体制で、2019年内に7人体制に増員し、2年以内に20人規模に増やす。営業を強化するとともに、日本語によるサポート体制を築く。日本のWebサイト(https://www.nginx.co.jp/)も2019年2月7日に公開した。国内販売代理店は2社で、サイオステクノロジー(2014年6月から)とマクニカネットワークス(2019年2月から)。
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カントリーマネージャーは中島氏は、日本でNGINX Plusの販売を開始した2014年以降、国内で急成長していることを指摘した。JPドメイン(.jp)のサイトでNginx/NGINX Plusを採用している率は、2013年4月時点で3%弱だったが、現在は30%弱にまで伸びている。
グローバルでの採用率は41.0%で、Apache HTTP Server(44.3%)に次ぐ。「1~2年でApache HTTP Serverを逆転できる」(中島氏)と展望する。すでに、トラフィックが多いサイトではNginxの採用率が高い。例えば、トップ1万サイトではNginxが66.2%で、Apache HTTP Serverの19.3%を大きく引き離す(図1)。
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Apacheのスケーラビリティの問題を解決するためにNginxを開発
NGINX Plusの最大の特徴は、代表的なWeb(HTTP)サーバーソフトであるApache HTTP Serverと比べて高速に動作すること。Nginxの開発者で米Nginxの共同創業者であるIgor Sysoev氏は、当時仕事で使っていたApache HTTP Serverのスケーラビリティの問題を解決するためにNginxを開発した。Apache HTTP Serverでは同時に数百のクライアントしかアクセスできないが、Nginxなら同時に数千を超えるクライアントがアクセスできる。
NGINX Plusは、静的コンテンツを配信する通常のWebサーバーの使い方に加えて、負荷分散やコンテンツキャッシュのためのリバースプロキシとして広く使われている。企業が使っている既存のWebサーバー(Apache HTTP Serverなど)の前段にNginxを配置する使い方である。ハードウェアの負荷分散装置よりも安価にWebアクセス性能を高められる。
米Nginxではまた、NGINX Plusとは異なるWebサーバーソフトとして、NGINX Unitも販売している。
NGINX Plusは、高速に動作するが、静的コンテンツの公開と、リバースプロキシの用途に特化している。Apache HTTP Serverが備えるWeb連携機構(モジュール)のような機能は持たず、動的コンテンツ、つまりPHPやPerlなどの外部のプログラミング言語で開発したWeb連携アプリケーションを実行することができない。
一方のNGINX Unitは、Webアプリケーションサーバーを構築する用途のために開発したWebサーバーソフトである。Apache HTTP Serverと同様に、モジュール型のWeb連携機構を備えている。JavaやRuby、PHP、Perl、Python、Node.jsなど、各種の言語でWebアプリケーションサーバーを構築できる。