[ユーザー事例]

データドリブンが導く、ブリヂストンのビジネストランスフォーメーション

2019年4月18日(木)柏木 恵子

デジタルトランスフォーメーション(DX)やデジタルディスラプションの潮流で、歴史のある大企業が市場からの撤退を余儀なくされるケースがめずらしくない。そんな中、タイヤのグローバル最大手であるブリヂストンがこの先の成長戦略として描いたのが、デジタル技術を駆使して顧客の課題解決を支援するソリューションプロバイダーへの転換だ。先月開催されたPalo Alto Networks Forum 2019 vol.1(主催:パロアルトネットワークス/メディア協力:インプレス)に、ブリヂストン フェローの三枝幸夫氏が登壇。同社のDXやビジネス変革の取り組みのポイントを紹介した。(撮影:石川高央)

製造販売会社からソリューションプロバイダーへ

 主力のタイヤ製品を核に、グローバル180以上の生産/研究開発拠点を展開するブリヂストン。世界最大手のタイヤメーカーである同社の事業は、昨今の自動車産業の急速な進展に呼応したものとなっている。しかし消費者にとっては、歴史あるタイヤメーカーとして抱く典型的なイメージもまた強い。ブリヂストン フェローの三枝幸夫氏(写真1)は次のように話す。

写真1:ブリヂストン フェロー 三枝幸夫氏

 「今や自動車はどんどん機能を発達させてハイテクの塊になっています。それに比べると、タイヤは相変わらず黒くて丸くてゴムでできているわけです。でも、その中身には、実にさまざまなテクノロジーが詰まっています」

 自動車産業の大変革期にあって、新興メーカーの勃興も起こり、技術開発と市場販売の両面でグローバル規模の大競争が起こっている。1931年設立の名だたるグローバルメーカーといえどもまったく安泰ではない。そこでブリヂストンがこの先の成長戦略として描いたのが「製造販売業からソリューションプロバイダー」への転身である(図1)。

図1:製造販売業からソリューションプロバイダーへ(出典:ブリヂストン)
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 そんなブリヂストンのデジタルビジネスの取り組みの一例として、三枝氏は「鉱山/マイニングソリューション」を紹介した。

 オーストラリアや南米には、超大型トラック数百台をオペレーションするような巨大な鉱山が多数ある。鉱山会社では、いかに効率よく鉱物を採掘し、港から出荷するかがとても重要である。そこでブリヂストンは、すぐれたタイヤやコンベヤベルトを販売することにとどまらず、「お客様のダウンタイムを減らして効率を上げ、鉱山会社の生産性向上に貢献する」(三枝氏)という目的のデジタルサービスを立ち上げた。

 従来型の製造販売モデルでは、商品戦略や製品開発のエンジニアリングチェーンが垂直軸にあり、それを基にして調達、生産、物流、サービスといったサプライチェーンが水平軸にある。この、製品を製造し、販売して顧客に届けて終わりというビジネスモデルの転換を図ろうというのだ。

 具体的にどんなソリューションを構築したのか。鉱山向け車両のタイヤに空気圧や温度を測定するセンサーを取り付け、タイヤの状態をリアルタイムでモニタリングする。さらに、オペレーションの状態もデータを収集してデジタル化する。これらの現場データをデータサイエンティストが解析することで、「お客様にマッチした商品の提案や、状況に応じたタイヤローテーションの提案ができるようになります」(三枝氏)というわけだ(図2)。

図2:マイニングソリューションのビジネストランスフォーメーショント(出典:ブリヂストン)
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 「当社は長年にわたってお客様がパンク等の故障で困らないよう、ひたすら耐久性の高いタイヤを製造してきました。それが、デジタル化で現場のオペレーションの状況が正確に把握できるようになると、鉱物の種類やタイヤローテーションなどの条件によって、製品が寿命を迎える理由がまったく違うことがわかりました」(三枝氏)

 三枝氏によれば、現場の状態が精緻に分かるようになり、その情報をエンジニアリングチェーンに返して、よりよい製品開発やサプライチェーンの効率化につなげるクローズドループの制御を実現しているという。同社ではこれを「デジタルスレッド」と呼び、2017年にはオーストラリアにこのコンセプトを具現化するマイニングソリューションセンターを開設している。

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