[市場動向]

東京大学と日本IBM、先端デジタル技術と人文社会科学を融合した社会モデルの創出で連携

2019年8月22日(木)IT Leaders編集部

東京大学と日本IBMは2019年8月21日、先端デジタル技術と人文社会科学の融合をテーマとした革新的な社会モデルを、日本企業とともにデザインする新たな研究プログラム「コグニティブ・デザイン・エクセレンス(CDE)」を設立したと発表した。東京大学が持つ人文社会科学系や先端科学系の知見と、IBMが持つAI、ブロックチェーン、IoT(モノのインターネット)、量子コンピューターなどのデジタル技術を融合し、日本企業の強みを生かしながら持続的成長を実現する社会モデルの創出を、産学連携で推進する。

 東京大学と日本IBMは、委託研究契約により、2019年7月から2022年3月まで研究プログラムのコグニティブ・デザイン・エクセレンス(CDE)を実施する。プログラムリードは、東京大学 大学院情報学環 須藤修教授である。

 CDEは、日本企業の経営幹部が参加して、新しい社会モデルをデザインする。人文社会科学やデジタルデザインの専門家による課題提起を受けたうえで、参画企業によるディスカッションを行い、新たな視点や洞察力を得ながら社会や企業の未来に向けた社会モデルを提起する。現在検討しているテーマは、農業、エネルギー、格差、災害、教養、交通インフラ、ポストイベント、多様性など。

 東京大学は、国際連合が採択したSDGs(持続可能な開発目標)の達成と経済成長の両立に向けて、知識集約型への社会変革の起点となるように進める。このためには「Society5.0」という新たな社会の実現が不可欠だとし、経済成長のエンジンとなるデジタルデータについても、信頼ある自由なデータ流通を目指したDFFT(Data Free Flow with Trust)のグローバルな展開を推進する。

 金融、政治、環境といった様々な要素が複雑に絡み合う社会において、急速に進展するデジタル技術がもたらす価値を生かすためには、先端デジタル技術と人文社会科学を融合させた革新的な社会モデルの創出をデザインすることが重要。また、グローバル化における日本、とりわけ日本企業、日本社会のあり方という命題に取り組むことは産業界、学術界において喫緊の課題で、双方が連携した優れたアイデアが求められる。

 須藤修教授が議長を務める「人間中心のAI社会原則検討会議」が人間中心(Human-centric)を訴えるように、革新的な社会モデルは芸術、文学、歴史、文化、哲学、経済学、法律学、政治学、社会学などの人文社会科学的なアプローチが有用。CDEは、これらの人文社会科学領域とSTEM(科学・技術・工学・数学の教育分野)を融合させた学際的な見地から、生活者に新たな価値をもたらす革新的な社会モデルをデザイン・構築し、またその基本的な技能を学生に教育する。

 CDEに参画する企業は、以下の通り。

  • IHI
  • 味の素
  • アルパイン
  • NTTドコモ
  • オリンパス
  • 鹿島建設
  • キリンホールディングス
  • 第一生命保険
  • 帝人
  • デンソー
  • 東京電力ホールディングス
  • 日産自動車
  • 日揮
  • パナソニック
  • マツダ
  • 三井住友銀行
  • 明治安田総合研究所
  • ヤマトホールディングス

 今後は、革新的な社会モデルのデザイン・構築の教育機能として、AI研究やデータサイエンティスト育成をはじめ、先端デジタル技術の革新的な社会応用を学ぶ機会の提供を検討する。また、社会・産業プラットフォームを創出することを目的に、アイデア出しを支援し、ワークショップを開催して、最先端テクノロジーの情報を提供していく。さらに、人材交流、人材育成を目的とした学生、スタートアップ企業、インターンの共有の場として、東京大学本郷地区に新しく産学協創スペースを設けて、研究・討議を行う。

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