クボタとNTTコミュニケーションズは2019年10月1日、ごみ焼却熱を利用した廃棄物発電の効率化に向けて、ディープラーニング(深層学習)を活用した実証実験を実施していると発表した。稼働中のごみ焼却施設において、燃焼時に発生する蒸気量をリアルタイムに予測する。2019年6月から実験している。
クボタは2019年6月から、子会社のクボタ環境サービスが納入したごみ焼却施設において、廃棄物発電に利用する蒸気量を安定化させるための実証実験に取り組んでいる。廃棄物発電とは、ごみ焼却施設において、ごみが燃焼する際に発生する熱から高温高圧の蒸気をつくり、蒸気タービンを回転させて発電する仕組みのことである。
現状の廃棄物発電には課題がある。まず、投入するごみの性質や形状によって、蒸気量が変化してしまう。さらに、蒸気量を制御するためのパラメータが多数存在しているため、蒸気量を制御することが難しい。こうした背景から、安定した発電ができていない。
今回の実験では、蒸気量を安定させる手段として、ディープラーニング(深層学習)を活用する(図1)。NTTコミュニケーションズのAI解析ツール「Node-AI」を活用し、1分先のごみ燃焼状況を予測するモデルを作成した。さらに、時間によって変化する各入力の影響を可視化する「時系列アトリビューション解析技術」を用いて予測モデルを可視化した。
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約300に及ぶパラメータの中から重要なデータを絞り込み、蒸気量の変化の傾向を捉えるための分析処理を行うことで、1分先のごみ焼却状況を予測するモデルを生成した。加えて、この予測モデルを適用した予測システムを構築し、稼働中のごみ焼却施設に導入した。これにより、運用者が常に1分先の蒸気量をリアルタイムにモニタリングできる環境を構築した。
今後は、予測精度の向上を目指す。1分先を予測するモデルだけでなく、5分先を予測するモデルや10分先を予測するモデルも作成する。こうして、蒸気量を安定化させ、廃棄物発電の効率化と安定化に取り組む。