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[インタビュー]

「日本企業からの期待を実感、投資強化で貢献したい」─独CelonisのCEOにプロセスマイニングの今を聞く

独Celonis 共同創業者/共同CEO バスティアン・ノミナヘル氏

2020年2月27日(木)田口 潤(IT Leaders編集部)

ログデータを分析してビジネスプロセスを可視化、監視し、そして改善できるようにするプロセスマイニングツール。その有力ベンダーが独Celonis(セロニス)だ。同社の共同創業者の1人であり、共同CEOを務めるバスティアン・ノミナヘル(Bastian Nominacher)氏が来日したので、最新事情を聞いた。プロセスマイニングは広がり続けているのか、それとも落ち着きつつあるのか、どんな企業が採用しているのか、ほかのツールとの競合状況はどうか、といったことである。

 まず独Celonis(セロニス)について、簡単に説明しておきたい。プロセスマイニング研究の第一人者で、現在は独アーヘン工科大学教授のウィル・ファン・デル・アールスト(Wil van der Aalst)氏の理論・アイデアを元に、独ミュンヘン工科大学博士課程に在籍していた3人のドイツ人学生が2011年に設立した企業である。その3人のうちの1人がバスティアン・ノミナヘル(Bastian Nominacher)氏(写真1)であり、アレクサンダー・リンケ(Alexander Rinke)氏と共に共同CEOを務める。もう1人はCTOであるマーティン・クレンク(Martin Klenk)氏だ。

写真1:独Celonisの共同創設者/共同CEOのバスティアン・ノミナヘル氏

 ログデータからビジネスプロセスをエンドツーエンドで可視化するという、ありそうでなかった機能を実現したこと、それがプロセス変革の方法を模索していた独企業のニーズにマッチしたこと、設立翌年の2012年には大手の独シーメンス(Siemens)を顧客として獲得したこと、などから順調に成長。2019年には2億9000万ドルの資金調達に成功し、企業としての評価額は25億ドルになった。以下、一問一答でお届けする。

企業の関心はプロセスに向いている

──2011年に創業したセロニスは急成長し、2019年に評価額が25億ドル(約2700億円)になったと報じられました。一方で最近スタートアップ企業には逆風が吹き、成長優先から収益重視へと軌道修正を迫られる動きが相次いでいます。直近の状況はいかがですか?

 我々にとって2019年は、ダイナミックな年でした。売上高は前年比130%、つまり2.3倍に成長しました。キャッシュフローも一貫してプラスを維持しています。企業の関心はビジネスプロセス(業務プロセス)に向いており、例えば米IDCも2019年11月に出した報告書で「プロセスマイニングは最も高い成長を遂げるセグメント」と評しています。

──まったく問題ないわけですね。逆にそれだけの成長となると、社員数を増やす必要があるのでは?

 現在、社員数は800人ほどです。1年前は600人だったので200人ほど増えたことになります。ただ、当社のプロセスマイニングソリューション「Celonis Intelligent Business Cloud」はクラウドサービスが主力なので、ビジネスが拡大しているほどの人数は必要ありません(編集部注:同サービスの提供開始は2018年10月。それ以前はパッケージ製品の提供であり、現在もEnterprise Edition On Premiseはある)。

──顧客数はいかがですか? 売上げと同じく、倍増しているのでしょうか?

 そのとおりです。ざっと2000社になり、2019年に使い始めた企業がその半分近くを占めています。それだけではなく、2019年6月に無料で利用できる「Celonis Snap」をリリースしました。中小企業やスタートアップでの利用、大企業の試用を想定したエディションですが、約6000社が利用しています。その中には日本の有力企業など大手も少なくないので、有料サービスを利用する企業は2020年、さらに増えると見ています。

北米企業の新規採用が増加

──以前からのユーザー企業としては、ドイツのシーメンスやBMW、ルフトハンザ航空、スイスのABB、米国のUberといった企業が有名ですね(関連記事:欧州で沸騰するプロセスマイニング─BMW、Siemens、Lufthansaなど欧州企業はここまで来ている!)。ここ1年の間にCelonisを使うようになった企業には、どのようなところがありますか?

 1000社くらいありますが、日本で知られているのは自動車の独ポルシェ(Porsche)、通信事業者の英BTグループ(British Telecom)、ベルギーの飲料大手、アンハイザー・ブッシュ・インベブ(Anheuser-Busch InBev)でしょう。金融では経営再建中のドイツ銀行(Deutsche Bank)がそうです。

 ほかにもオフィス家具の米スチールケース(Steelcase)、飲料コングロマリットの米キューリグ・ドクター・ペッパー(Keurig Dr Pepper)、帽子メーカーの米ニューエラ・キャップ・カンパニーNew Era Cap Company)、農機の米ディア・アンド・カンパニーDeere & Company)、カナダのエネルギー企業ハスキー・エナジー(Husky Energy)、CADソフトウェアの米オートデスク(Autodesk)、バイオ製薬の米アムジェン(Amgen)なども、2019年から使い始めています。おわかりいただけると思いますが、EUはもちろん、北米企業でも採用が増えています。

──プロセスマイニングの適用領域という点で、何らかの傾向はありますか?

 いえ、企業によって色々ありますし、1つの企業内でも多くの領域に利用されています。ファイナンス、サプライチェーン、販売・顧客サービス、情報システムなどです。企業は、Celonis Intelligent Business Cloud(画面1)によって、プロセスに存在する非効率性を発見するだけでなく、効率化するためのアクションを特定してリアルタイムに監視し、最適なパフォーマンスを発揮できるようになります。ですから様々な業務のオペレーショナルエクセレンスに向けて利用してもらっています。

画面1:Celonis Intelligent Business CloudのProcess Analytics画面(出典:独Celonis)
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●Next:SAP以外のユーザーがCelonisを導入するのは難しい?

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