[技術解説]

「もっとソフトウェア技術を重視すべき、これが日本の未来を切り拓く」─東京大学大学院 越塚登氏

JISA ソフトウェアイノベーションシンポジウム2019 基調講演より

2020年3月23日(月)越塚 登(東京大学大学院 情報学環 学環長・学際情報学府 学府長)

世界のITトレンドの中心地はGAFAを筆頭とするメガプラットフォーマーにあり、日本のIT業界・企業は影が薄いと言われて久しい。しかし、そんな中でも「あらためて、もっとソフトウェア技術を重視することで、日本企業にもまだチャンスがある」と説くのが、東京大学大学院情報学環 学環長・学際情報学府 学府長の越塚登氏だ。本稿では、情報サービス産業協会(JISA)の年次イベント「ソフトウェアイノベーションシンポジウム(SIS)2019」の基調講演に立った越塚氏の講演内容を紹介する。
※本稿は、一般社団法人情報サービス産業協会(JISA)会報誌「JISA Quarterly No.136」(2020年2月発行)の記事から抜粋・編集して掲載しています。

GAFAに見る、寡占化プロセスの短期化

 情報通信の技術で一番大きい要素は何かということを考えると、イノベーションの賞味期限を極めて恐ろしく短縮してしまっているということではないかと思います。つまり、GAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon.com)がどれだけ寡占化しているかということではなく、寡占化に至るプロセスが非常に短い時間だったということではないかということです。

 情報通信の歴史を見てみると、大型計算機の時代、PC、インターネットの時代、そして現代の発展プロセスを比較してみると、ゼロから始まって世界のレベルに至るまでの時間がどんどん短縮されている、この時間の短縮がICTのおかげと言えるのではないでしょうか。

 そうすると、この後ICT業界はどうなるかというと、誰にもわからない。誰にもチャンスがあると言えばあって、ICTによって世界で一番になっていくチャンスというのが存在していると思えます。もしかしたらある日の午前中の内に、世界で一番になるという時代が来るのかもしれない。GAFAの時代がずっと続くかなんてわからないのです。

 今の時代、技術というのはやはり重要であって、ソフトウェア技術をもっともっと重視しなければならない、ないしはそれを重視するということが、世界の潮流と違う差別化ができる要素になるかもしれないというお話をしたいと思います。

サイバーとリアルをつなぐIoT

 まず、IoTとは何かを考えてみます。特徴として、仮想空間と実空間、サイバーとフィジカルのインテグレーションということがあります。Society 5.0で言われていることでもあります。仮想空間とリアルな現実世界で同じものがペアになって存在するようになるので、デジタルツインと言われます(図1)。このサイバーとリアルをつなぐものがIoTとなります。

図1: デジタルツインのイメージ
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 本当は実社会と仮想社会は簡単に比較してはいけないのですが、わかりやすくするためにイメージで比べてみます。リアルとサイバーをくっつけるときに、どこがボトルネックになってくるかというと、昔はコンピューターが遅かったのでそれがボトルネックになり、何か計算させたくてもアップアップしていました。ところが今は処理性能が向上しているので、逆に計算させたくてもデータやプログラムが足りなくて計算させることができない状況になっています。

 それを太くするのがIoTで、センサーを持ち出したりタグを持ち出したりして、アウトプットの側でもアクチュエーターなどを使ってヒューマンインタフェースを改善する方向へと動いています。したがって、ここをつないでいるセンサーの技術やヒューマンインタフェースについて、バーチャルのほうからリアルのほうへフィードバックをかける技術が極めて重要であると思います。

●Next:ICTの行ったり来たりの歴史と、「日本のITは利活用に寄り過ぎている」

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※本稿は、一般社団法人情報サービス産業協会(JISA)会報誌「JISA Quarterly No.136」(2020年2月発行)の記事から抜粋・編集して掲載しています。

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