[市場動向]
スパコンで新型コロナウイルスに立ち向かう─「COVID-19ハイパフォーマンスコンピューティングコンソーシアム」が緊急発足
2020年3月25日(水)IT Leaders編集部
世界を大混乱に陥れている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。止まらぬ世界規模の爆発的拡大=パンデミックに立ち向かうべく、米国のホワイトハウスやエネルギー省、IBM、AWS、グーグル、マイクロソフトなどが協力して「COVID-19ハイパフォーマンスコンピューティングコンソーシアム」を設立した。2020年3月21日(米国時間)に米IBMなどコンソーシアムメンバーが概要や目的を発表している。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行に、テクノロジーの力で対処すべく、米国の大手ITベンダーと国家研究機関が連携して「COVID-19ハイパフォーマンスコンピューティングコンソーシアム(https://covid19-hpc.mybluemix.net/、画面1)が立ち上がった。
拡大画像表示
同コンソーシアムの目的は、スーパーコンピュータ/HPC(High Performance Computing)技術による大規模なコンピューティングパワーを活用し、研究者が伝染病学やバイオインフォマティクス、分子モデリングを高速に実行できるようにすること。
IBMのほか、アマゾン・ドットコム/Amazon Web Services(AWS)、グーグル/Google Cloud、マイクロソフトも協力しており、動員するリソースは実に77万5000CPUコア、3万4000GPU。トータルで330PFLOPS(ペタフロップス)以上の処理性能に達するという。単純な比較はできないが、理化学研究所/富士通のスパコン「京」が10PFLOPS、京の後継で2021年に運用開始予定の「富岳」が京の100倍とされる。
IBMのリサーチディレクター、ダリオ・ギル氏は、プレスリリースで次のような声明を出している。
「COVID-19によるパンデミックが始まって以降、我々は米国や世界中の政府と緊密に連携して、組織が回復力を維持し、パンデミックの結果に適応するのを支援するために、当社の技術と専門知識を活用するためのすべての利用可能なオプションを発見しようとしている。そしてディスカバリー(発見)プロセスを加速し、科学および医学界が治療法にたどり着き、最終的には治癒の方法を開発できるようにしている」
同コンソーシアムには、ローレンスリバモア国立研究所(LLNL)、アルゴンヌ国立研究所(ANL)、オークリッジ国立研究所(ORNL)、サンディア国立研究所(SNL)、ロスアラモス国立研究所(LANL)、アメリカ国立科学財団(NSF)、NASA、マサチューセッツ工科大学(MIT)、レンセラー工科大学(RPI)なども参加している。発足時点の全コンソーシアムパートナーは次のとおりだ。
IT業界:
IBM
アマゾン・ドットコム/Amazon Web Services(AWS)
グーグル/Google Cloud
マイクロソフト
学術機関:
マサチューセッツ工科大学
レンセラー工科大学
カリフォルニア大学サンディエゴ校
エネルギー省管轄国立研究機関:
アルゴンヌ国立研究所
ローレンスリバモア国立研究所
ロスアラモス国立研究所
オークリッジ国立研究所
サンディア国立研究所
連邦機関:
国立科学財団
ピッツバーグスーパーコンピューティングセンター
NASA
何らかの成果が生み出されるのは先だし、そもそもうまく機能するのかもよく分からない。しかし危機に際してこうしたコンソーシアムを立ち上げられるのは米国の強みだろう。CSR(企業の社会的責任)という言葉では説明できない何かがあるのかもしれない。翻って日本はどうか? 今のところIT企業や研究機関、大学が協力し、何らかの根本対策に乗り出すような動きは見えないし、政府から産業界への要望があるという話も聞かない。もちろん、今でも遅くはないので期待したいところだ。
スーパーコンピュータ / HPC / IBM / AWS / Google Cloud Platform / Microsoft / パンデミック / 新型コロナウイルス / BCP / CSR / ORNL