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[ユーザー事例]

新型コロナ対策が継続的なワークスタイル変革へ─AWSを駆使した仰星監査法人、プラス、シオノギの実践

2020年5月28日(木)五味 明子(ITジャーナリスト/IT Leaders編集委員)

この数カ月で世界を襲った新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。ご存じのとおり日本経済への深刻だが、一方でこれまでどんな政策や提言もなしえなかった勢いとスピードでもって、日本の企業と従業員に対し抜本的なワークスタイル変革を迫ることになった。キーワードはやはりクラウドだ。先日開催のAWSジャパンのオンライン説明会の内容を基に、パブリッククラウドの活用で目下のテレワーク環境を整えつつ、次世代のデジタルなワークスタイルも見据えた変革を図る国内企業3社の取り組みをお伝えする。

 経団連が2020年4月中旬に行った調査によれば、何らかのかたちでテレワーク/在宅勤務を実施している会員企業は97.8%にも上り、同年2月に行った68.6%からまさに急伸した。好むと好まざるにかかわらず、今はほとんどの日本企業がオンラインで働く環境を整えざるをえない状況にあるのだ。たった数カ月でこれほど日本人の働き方を一変させたトリガーは過去に例を見ない。

 オンラインでの就業形態を前提とする環境では、当然ながらモダンなテクノロジーの活用が必須となる。なかでも"ポストコロナ"を見据えた継続的な活用を可能とするテレワークシステムを構築するため、パブリッククラウドベースのソリューションを選ぶ企業は少なくない。以下、アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)のユーザーが採った選択とアクションを紹介しよう。

既存のリモート業務体制が真価を発揮─仰星監査法人

 国内準大手の監査法人である仰星監査法人では、2015年から「Amazon WorkSpaces」を在宅勤務ソリューションとして利用している。同サービスはマネージドクラウド型のVDI(デスクトップ仮想化基盤)、いわゆるDaaS(Desktop as a Service)である。

 その後、同社はAWSの利用範囲を広げ、現在では法人監査業務を遂行するためのITインフラを、WorkSpacesを中心にAWSサービスで構築している。ちなみに、AWSが東京リージョンからWorkSpacesを提供開始したのが2014年8月。つまり、かなり初期からのWorkSpacesユーザーということになる。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、従業員は在宅で監査業務を遂行しているが、下地となるリモートワークの仕組みがWorkSpacesによってすでに整っていたことが大きい。監査業務は本来、担当者が被監査企業(クライアント)に出向くのが常であるが、すでに監査業務を行う従業員全員(約330ユーザーアカウント)にWorkSpacesのシンクライアント端末を貸与済みで、クライアントの会議室などからAWS上に構築したファイルサーバーにアクセスして業務にあたるスタイルが定着していた。

 つまり、同社には以前よりオンプレミスのファイルサーバーは存在しない。インターネットに接続できる環境があればどこでもAWS上にある最新の監査調書にあたることができ、かつ従業員の端末に監査データのような重要情報が残ることもなく、情報漏洩リスクを極小化していたわけだ(図1)。

図1:仰星監査法人のAWS WorkSpacesをコアにした在宅勤務環境。監査業務の遂行環境であることはもちろん、ユーザーの端末(シンクライアント)に機密情報を残さない仕様であるため、法人リスク管理インフラとしても機能している
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写真1:仰星監査法人のリモートワーク環境の整備を主導した金子彰良氏

 仰星監査法人 パートナー 公認会計士の金子彰良氏(写真1)はこう説明する。「ネットに接続さえできればどこからでも業務上必要な書類にアクセスできる環境ができていたので、コロナ対策といっても、クライアント先から自宅へと仕事のロケーションが変わっただけでした」。国内での感染拡大が始まった2月から3月にかけては、監査法人にとって最も多忙な期末決算の時期だったが、すでにリモートワーク環境を築いていた同社にとって、在宅勤務での監査業務への切り替え自体がさほど負担にならなかったという。

 とはいえ、クライアントあっての監査業務だ。「在宅勤務は単にITツールを導入すれば十分というわけではなく、アナログ面の対応、とくに監査法人にとっては被監査企業の協力が不可欠であり、感染症対策特有の事象に合わせた対応も必要となります」と金子氏は述べ、国内外の感染状況を注視しながら臨機応変に対策やルールを変更していける対応・体制の重要さを強調する。

 仰星監査法人における臨機応変な取り組みの一例が、AWSのフルマネージド型クラウドファイルストレージ「Amazon WorkDocs」の活用だ。もともと、同社は監査調書の作成に必要な資料をクライアントから迅速かつセキュアに受け取るため、同社が運営するWorkDocsサイトをクライアントに対して提供してきた。このWorkDocsサイトは監査チームと被監査企業のみがアクセス可能な個別のサイトとして構築されているが、「2月以降、30チームからWorkDocsサイトの新規作成依頼がありました」(金子氏)という。現在、同社のWorkDocsサイトは約110サイトが稼働中だが、今後も監査資料の受け渡しをオンラインに切り替えたいという需要の増加から、さらに増えていくことは間違いない。

 「AWS環境に監査業務を集約する以前は、クライアントのオフィスに担当者が出向き、監査資料を紙で受け取り、密閉された会議室で業務にあたっていましたが、今はクライアントと担当者双方のためにもそうした状況になることは避けなくてはなりません。一方でクライアントの中には『どうしても(資料は)紙でなければ出せない』というところもあります。そうしたクライアントも含め業務実施上の制約がある中で、監査の対応について誠実に議論し、理解を得る行動を我々は取り続けていかなくてはならないでしょう」(金子氏)

●Next:プラスやシオノギが取り組んだ、アフターコロナを見据えた課題解決

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