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[インタビュー]

「コロナ禍で、CIOはより強いリーダーシップと実行力が必要」─Adobe CIOストッダード氏

米アドビ シニアバイスプレジデント兼CIO シンシア・ストッダード氏

2020年8月6日(木)指田 昌夫(フリーランスライター)

世界を襲ったコロナ禍が、社会やビジネスの常識を変えつつある。ITで自社のビジネスを変革し、デジタルトランスフォーメーション(DX)の牽引を担うCIO(最高情報責任者)は、コロナがもたらすリスクと変革機会をどうとらえたらよいのか。米アドビ(Adobe)のシニアバイスプレジデントでCIOを務めるシンシア・ストッダード(Cynthia Stoddard)氏が、グローバル企業のデジタルリーダーの立場から氏の方針を語った。

 シンシア・ストッダード氏は、アドビ(Adobe、注1)のシニアバイスプレジデント兼CIOとして、グローバルのIT/エンジニアリングチームを統括する。同社が成し遂げた、パッケージソフトウェアからサブスクリプションへのビジネスモデルへの転換を、IT施策の面から支えた人物だ。2016年6月に同職に就き、2017年、2018年と連続でIDGの「CIO 100 Award」を受賞している。

写真1:米アドビ シニアバイスプレジデント兼CIOのシンシア・ストッダード氏

注1:2018年に旧社名のアドビ システムズ(Adobe Systems)から変更。2020年6月には日本法人もアドビ株式会社に社名変更している

全社テレワークは3年前から対応済み

 ストッダード氏はまず、コロナ禍でのアドビ自身の業務体制とその評価について語った。

 「アドビでは現在も世界で2万3000人が在宅勤務をしているが、働き方に関してはよい結果が出ている。オンラインの業務に関して調査しているが、社員のビデオアプリケーションの使用率は、コロナ前と比べて約20%高くなっており、コラボレーションが活発になっている。エンジニアリングツールの利用は、コロナ前と変わっていない。つまり在宅でも従来と同じように業務ができている。ナレッジやFAQデータベースへのアクセスは、コロナ拡大時期に高くなっていた。今は使い方に慣れてきたようで、落ち着いている」

 もともとアドビでは、コロナ前からほとんどの社員が在宅でも業務にあたれるリモートワークシステムを構築していた。「アドビ自身のデジタルトランスフォーメーション(DX)はかなり進んでいたと思う。タスクベースの業務スタイルに変わっており、顧客対応や営業プロセスも、今回の事態には対応できていた」(画面1

画面1:米アドビのコーポレートブログより。パッケージからクラウド/サブスクリプションへのシフトの過程で、アドビはリモートワークの仕組みを整えていた

 ストッダード氏の推進で、アドビは3年前に、社員が日々使うオフィス生産性(Office Productivity)ツールの集約を行っている。コラボレーション、ファイル共有、動画、モバイル、タブレット、Web会議といったさまざまなツールを、1つの環境から使えるようにしたという。そのうえで、各組織の中での働き方の実態をとらえてペルソナを設定。業務や組織によって異なるペルソナごとに標準的なツールの構成を整えている。ストッダード氏は次のように説明する。

 「例えばコミュニケーションツールの場合、エンジニアリング部門ではSlack、管理部門ではMicrosoft Teamsを使う。Web会議システムは、全社でBlueJeans(米ベライゾンの子会社が開発・提供)が標準だ。こうして部署ごとで標準のツールを使い分けている。また、ビジネスを円滑に動かすためバーチャルなホワイトボードのツールも導入し、ブレインストーミングなどができる環境を作っている」

 こうした取り組みにより、全社で概ねスムーズにテレワークへの移行が進んだが、一部で技術的に対応が必要だった部分もあったという。「エンジニアリングのグループが大容量のデータをアップロードする際に、容量不足などの課題があったが、すぐに解決した。もう1つは自宅からのネット接続が不安定なことだったが、今はほぼ問題なく接続できている」(ストッダード氏)

 アドビではまもなく、700人の学生に対して自宅からのインターンシップを実施する。コロナ禍対応で、インターンの学生は、DaaS(Desktop as a Service)の仕組みで自宅に業務環境を整え、テレワークで作業することになる。9割は自前のPCから参加するが、1割は業務内容上、アドビから送られてきたデバイスを用いるという。

 テレワークの長期化が予想される中で、アドビはVPNを強化し、ゼロトラストネットワークの導入を進めている。また、社員の出社が極端に減ったことで、バックオフィス業務の効率化にも着手。「RPAやAIなどを活用して、ビジネスプロセスから人の介在を極力取り除く」(ストッダード氏)

●Next:ストッダード氏が示す「コロナ後のCIOの役割・資質」

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