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NECとNTT Com、データセンターの新冷却システムを開発、空調消費電力を半減
2020年8月28日(金)日川 佳三(IT Leaders編集部)
NECとNTTコミュニケーションズは2020年8月28日、データセンター向けの新たな冷却システムの実験結果を発表した。空調消費電力を従来と比較して半減できた。冷水冷凍機などに使う低圧冷媒を空調設備で実用化したものであり、既存フロアへの設置が容易な構造とした。2022年にNECでの製品化を目指す。まずはNTT Comが自社施設への導入検討を進める。
NECとNTTコミュニケーションズ(NTT Com)は今回、データセンターの空調に利用できる新たな冷却システムを開発し、NTT Comのデータセンターで実証実験を行った。実験の結果、空調に要する消費電力を、大型空調機に相当する40kWの冷却能力において、現行比で半分以下に削減した(図1)。実験ではさらに、既存のフロアやサーバールームに簡単に設置できることを確認した(関連記事:NEC、気化熱を利用したラック冷却技術を夏でも使えるように高度化、2020年までに提供)。
液体が気化する際に大きな熱が移動する気化熱の仕組みを採用した。配管内の気体と液体を分離することによって冷媒蒸気の流れをスムーズにし、低圧冷媒を大流量で流すことに成功した。冷媒には、冷水冷凍機などに使う低圧冷媒の新冷媒(R1224yd)を採用した。NECとNTT Comによれば、R1224ydを空冷空調機システムで実用化することは世界初としている。
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既存設備への追加導入も容易である(図2)。気化熱を利用した相変化冷却システムは従来の水冷システムより熱交換性能が高いため、サーバーラック上部に取り付ける受熱部の性能を2倍以上に向上し、従来比で高さ約2分の1に小型化した。天井高が低いフロアへの局所空調として、既存の建物・設備に後から導入することを容易にした。
背景について両社は、データセンターの空調消費電力を削減する策が求められている状況を挙げる。「発生熱源付近で冷却する方法が一般的に良い構成とされているが、配管が容易な水冷システムによる局所空調では、受熱部機器が大きいため後からの設置が困難だった。また、従来の冷媒は高圧ガスとなるため、有資格者による管理が必要となるなど課題があった」(両社)。