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[市場動向]

「プロセス衛生」とは? プロセスマイニングが企業システムの新常態になる理由

「毎日手を洗うように、毎日マイニングを行う」習慣が経営にもたらすもの

2020年9月15日(火)田口 潤(IT Leaders編集部)

日々の業務の中で、生産性の観点では無駄に思えても、コンプライアンス上行わなければならない承認や確認事は多い。それらを部下など他人任せにするケースも同様だ。ところが、それを徹底したところで不正や事件を根絶できるわけではない。最近ではドイツの有力ベンチャーが破綻する事件もあった。こうした状況を解消できるかもしれない概念として浮上しているのが「プロセス衛生(Process Hygiene)」である。耳慣れない言葉だが、ここに企業システムにおけるニューノーマル(新常態)の1つの姿がある。

アールスト博士がプロセス衛生を掲げた真意

 読者は、「プロセス衛生(Process Hygiene)」という言葉もしくは概念をご存じだろうか。ネットで検索すると「Hygiene Process(衛生プロセス)」と共にたくさんの情報が出てくる。食品や飲料、医薬品、化粧品などの製造プロセスにおける衛生管理(代表例がHACCP=危害要因分析に基づく必須管理点)に関するものだ。しかし遠くない将来、このプロセス衛生の意味が大きく変わる可能性がある。

画面1:2020年9月11日に刊行された『プロセスマイニングの衝撃 ~シーメンスやBMW、Uberは、なぜ本気で取り組むのか~』(ラース・ラインケマイヤー、百瀬公朗、インプレス刊)

 筆者がこの言葉を知ったのは、当社新刊の『プロセスマイニングの衝撃 ~シーメンスやBMW、Uberは、なぜ本気で取り組むのか~』ラース・ラインケマイヤー、百瀬公朗、インプレス刊、画面1)を編集していた数カ月前。“プロセスマイニングの父”と称される、独アーヘン工科大学教授のウィル・ファン・デル・アールスト(Wil van der Aalst)博士が執筆した記事に出てくる、プロセスマイニングの未来に関わる概念である。

 しかし、プロセスマイニングと衛生が、いったいどう関わるのだろうか? 博士は記事でこう書いている。

 「プロセスマイニングをニューノーマルとするためには、協調的な努力が必要です。ここで言うニューノーマルとは何を意味しているのでしょうか。個人が日々行う衛生管理と同様に、企業の衛生管理においてプロセスマイニングが当たり前になることを指します。投資対効果などの検討は不要です。歯を磨く、トイレの後に手を洗う、着替えをするといった個人の衛生管理が投資対効果を考えずに行われるのと同様です。これに倣えば、プロセスマイニングはプロセス衛生(Process Hygiene)またはビジネスプロセス衛生(Business Process Hygiene)を確かめる手段なのです。重要なプロセスを客観的に監視し分析することは、組織の全体的な健康と幸福のために欠かせません」

 すなわち、ニューノーマルになった暁には、企業や組織は何らかの問題がある時や問題が生じた時にプロセスマイニングを利用するのではなく、組織の健全性と幸福を一定水準以上に保つために、常に稼働させるようになる。人にとって日々の歯磨きや手洗いが日常の当たり前であるのと同じく、企業にとってプロセスマイニングは日常の当たり前になる。この点で、多くのITソリューションやツールと異なり、プロセスマイニングは投資対効果を慎重に検討して導入する類いのものではない──こんな骨子である(画面2)。

画面2:2020年5月12日に自身のTwitterに投稿されたアールスト博士のツイート。「2019年にプロセス衛生を提唱したとき、まさか今年になってコロナ禍が私の主張を裏付けるとは思わなかった。つまり、毎日手を洗って、マイニングを行うということだ」
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 いかがだろうか? なかには「なぜプロセスマイニングがニューノーマルになるのか? この分野の先駆者として普及させたい気持ちは分かるが、ちょっと宣伝が過ぎるのではないか」という疑問があるかもしれない。筆者自身、最初に読んだときは疑問を感じたが、今は十分にその可能性があると考えている。一度、プロセスマイニングを導入してシステムを構築すれば、日々、実行されているビジネスプロセスを可視化し、モニタリングできるようになる。

 プロセスマイニングは、マイニング(Mining:採掘)という言葉から、必要時にアドホックに稼働させる印象がある。だが、そうではなくて常時稼働させておけばよい。業務プロセスの繁閑の実情や関連部署の業務負担を茅根に捕捉し把握でき、何らかの異常発生も漏れなく検知できる。アールスト博士は、その比喩に歯磨きや手洗い、着替えを持ち出したわけだが、例えば「健康に少し不安のある人が体温や体重を毎日測る」ことを思い起こせば、よりピンとくるはずだ。

●Next:現行の会計監査にある“落とし穴”を回避するために

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