日立製作所は2020年10月22日、製品検査や設備保全を対象に、AI技術や無線センサー技術を活用し、音響データから異常音を検知するサービスを発表した。2020年11月2日から販売し、2021年1月から順次提供する。センサーなどで収集した音響データをAIで解析し、製品不良や設備故障による異常音を検知する。これまで検査員の経験に基づいて行っていた聴音点検を高度化・効率化する。
日立製作所は、製造現場での製品検査および設備保全を対象に、製品の打音や設備の稼働音などの音響データから異常音を検知するサービスを販売する(図1)。2021年1月から設備点検のための「設備点検自動化サービス - 異音検知システム」を、2021年4月から製品検査のための「IoTデータモデリングサービス - IoTデータ監視サービス」を、それぞれ提供する。
上記のサービスを利用することで、これまで検査員の経験やノウハウに基づいて現場で行ってきた判定を、データ解析に基づいた定量的な判定によって補完できる。安定した監視品質を維持できるようになるほか、遠隔での設備監視などが可能になる。AIを使った解析により、検査員では気づかなかった新たな特徴まで検知できるようになる。
市販の汎用マイクで収集した音をAIで分析
製品検査用のサービスの概要として、まず、製品の稼働音や加工音、打音などを、音の特徴や製造現場の環境にあわせた市販の汎用マイクで収集する。次に、AI技術により、音源を分離し雑音を除去するとともに、対象となる検査音の特徴量を抽出し、音の異常度を算出・可視化して異常音を検知する。
音分析においては、稼働音の変動や、周囲の環境音の変化など、条件や時間によって音のブレが大きいという課題があるという。日立のAI技術では、こうした音のブレに対応しながら、幅広い条件下で高精度に異常音を検知できるとしている。これにより、空調の強さなどが変化する環境にも導入できる。リアルタイムに収音と判定を行うため、迅速に不良音を検知できる。
マイク搭載の無線センサーで設備を点検
設備点検用のサービスの概要として、マイク機能を搭載した独自開発のレトロフィット無線センサーで設備の稼働音を収集・解析し、異常音を検知する。正常時の音響データをAIに学習させることで、音の異常を可視化する。
レトロフィット無線センサーは、日立の自社工場での実績・ノウハウをもとに実用化したもの。電池駆動・防水防塵かつ無線通信が可能で、電源や通信ケーブルの設置が難しい屋外や高所の現場でも導入できる。独自の電源制御技術を適用した省電力設計により、電池で5年間連続稼働する。
日立は2018年から、アナログメーターの目視点検を自動化するカメラ機能を搭載したレトロフィット無線センサーを販売している。今回のマイク機能を搭載したレトロフィット無線センサーと併用することで、設備点検自動化の範囲を拡大できる。