[事例ニュース]

5Gが導くスマート工場─三菱重工工作機械が無人搬送車制御や作業員遠隔支援などを検証

2021年4月23日(金)IT Leaders編集部

三菱重工工作機械(本社:滋賀県栗東市)は、栗東工場において工場内の無線化に向けたローカル5Gの実証実験を行った。2021年1~2月の1カ月の期間、NEC、NTTドコモ、サンリツオートメイション、構造計画研究所と共に実施した。総務省の令和2(2020)年度「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」を受託したもの。NECが同年4月22日に発表した。

 三菱重工工作機械は、栗東工場内の無線化に向けたローカル5Gの実証実験を行った。(1)変種変量生産に資する制御系ネットワークの無線化、(2)無軌道型AGV(無人搬送車)の遠隔制御、(3)現場作業員を対象とした効率的な機器等の遠隔保守作業支援の3つについて、5Gの導入効果および実装に向けた機能面、運用面の検証を行った。

 今回の実証実験は、総務省の令和2(2020)年度「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」を受託したもの。NEC、NTTドコモ、サンリツオートメイション、構造計画研究所がプロジェクトに参画した。

 NECによると、「工場は金属の製造設備があることから電波が遮蔽されるケースがあり、大型クレーンやフォークリフトなどの可動設備があることから、電波の受信強度に変化が生じてしまう。これらの要素から、無線通信には困難な環境である」という。

 こうした環境下、三菱重工工作機械の栗東工場において、ローカル5Gによって効果が得られる3つのシステムを想定し、それぞれについて導入効果を検証。さらに、実装に向けた機能面および運用面の課題を検証した。この結果、5Gの有効性が確認でき、工場の無線化に必要な知見が得られた。

工場内制御ネットワークの無線化、無人搬送車の遠隔制御

 (1)工場内制御ネットワークの無線化では、産業用EthernetであるEthernet/IPとCC-Link IEを対象に、5Gを利用して通信状況を評価した。産業用Ethernetに特有の一定周期の通信(サイクリック通信)を計測し、遅延や停止を0.1秒未満に抑えられることと、長時間の安定した通信が可能であることを検証した(写真1)。

写真1:制御系ネットワークの5G無線評価機器(出典:NEC)
拡大画像表示

 (2)無軌道型AGVの遠隔制御では、金属遮蔽物が多い工場内で、監視カメラを搭載した無軌道型AGVシステムを稼働させた。高精細画像伝送を想定し、通信速度が常時10Mbit/s以上となる通信と、AGVの制御信号の通信が、いずれも途切れることなく同時に行えることを確認した(写真2)。

写真2:工場内に設置した基地局用無線ユニット(左)と無軌道型AGV(無人搬送車)(出典:NEC)
拡大画像表示

 また、無軌道型AGVに搭載した監視カメラを使って遠隔監視しながら、ロボットコントローラを用いて制御を実施した。これにより、周囲の環境を把握しながらリモートで作業ができることを検証した。

 「5Gは、無線LANと比べて通信エリアが広い一方で、工場では遮蔽などの影響で、5G通信エリア端で電波が届きにくいことがある」(同社)という。これを解決するため、無線LAN装置を追加で設置して、通信エリアを拡張した。NECのネットワーク仮想化技術を利用し、状況に合わせて通信経路(無線LAN)に無瞬断で切り替える仕組みとした。制御を止めずに運用できることを確認した。

●Next:5Gの映像伝送で現場作業員を支援、動的な電波マップの生成も

この記事の続きをお読みいただくには、
会員登録(無料)が必要です
  • 1
  • 2
関連キーワード

三菱重工工作機械 / 5G / NEC / 実証実験 / スマートファクトリー / ローカル5G / OT / 製造 / 工場 / 滋賀県 / 遠隔保守

関連記事

トピックス

[Sponsored]

5Gが導くスマート工場─三菱重工工作機械が無人搬送車制御や作業員遠隔支援などを検証三菱重工工作機械(本社:滋賀県栗東市)は、栗東工場において工場内の無線化に向けたローカル5Gの実証実験を行った。2021年1~2月の1カ月の期間、NEC、NTTドコモ、サンリツオートメイション、構造計画研究所と共に実施した。総務省の令和2(2020)年度「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」を受託したもの。NECが同年4月22日に発表した。

PAGE TOP