デル・テクノロジーズは2021年5月13日、中堅企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する支援プログラム「中堅企業DXアクセラレーションプログラム」の第2回中間報告会を開催した。2020年10月に開催した「DXアクセラレーションプログラム本選」の上位入賞9社が登壇し、各社の取り組みを説明した。本選から6カ月が経過(2021年2月3日の第1回中間報告から3カ月が経過)した時点での各社の最新状況を報告した。
「中堅企業DXアクセラレーションプログラム」は、中堅企業のデジタル変革を推進する支援プログラムである。デル・テクノロジーズと奈良先端科学技術大学院大学が共同で推進している。中小企業に対して、AI、ブロックチェーン、IoTなどを学ぶ講座や、プログラミング技術の習得支援などを提供している。
2020年10月7日に企業参加型のコンテスト「中堅企業DXアクセラレーションプログラム 本選」を開催し、12社が参加した。2021年2月3日には、コンテストから3カ月後の第1回中間報告として、コンテストの上位入賞9社が登壇し、各社の取り組みを説明した(関連記事:日本の中堅企業が挑むデジタル変革─DXアクセラレーションプログラム受賞9社の取り組み)。今回、コンテストから6カ月が経過したことを受け、第2回の中間報告会を開催した。各社は今後、プロトタイプの開発と評価に入る。
今回登壇したコンテスト上位9社は、登壇順に、CDISC-SDTM Blockchain Team、イグス、ヴィッツ、ピーチ・ジョン、平井精密工業、水上、アズワン、レニアス、ユーネットランスである。
臨床データをブロックチェーンで共有
CDISC-SDTM Blockchain Teamは、複数の製薬会社、CRO、システム会社で構成する合計8人のチームである。同チームは、臨床データをブロックチェーンで管理して共有する取り組みを進めている。患者自身の権限でデータ共有を拒否したり、費用の一部をスマートコントラクトで患者に還元したりできるようにする。
第1回中間報告の時点では、ブロックチェーンの適応案を議論し、関連技術を調査していた。今回の第2回中間報告では、着目しているシステム実装の仕組みを報告した(図1)。現在、要素技術について、技術検証を進めている途中である。
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検証を進めている仕組みは、ブロックチェーン(Ethereum)に、P2P型の分散ファイルシステムであるIPFS(Interplanetary File System)と、公開鍵暗号方式の一種であるABE(属性ベース暗号)を組み合わせる、というものである。臨床データをABEで暗号化してIPFSに格納し、IPFS上に存在するデータのハッシュ値や、データ利用者がデータにアクセスするために必要な情報を、ブロックチェーンに格納する。
ERPデータのクリーニングに取り組む
ドイツの樹脂素材機械部品メーカー、イグス(igus)の日本法人、イグス(本社:東京都墨田区)は、ERP(統合基幹業務システム)を対象に、会社名と住所のデータクリーニング(名寄せ)に取り組んでいる。変換プログラムは、Python言語で自社で開発した。変換情報を記述したCSV(カンマ区切り形式)データを利用して、データベースを更新するSQLを自動で生成する。
現時点で、会社名の変換プログラムの作成は完了しており、2021年4月19日に検証をスタートした(図2)。PCからバッチ処理でERP(Oracle)にアクセスし、SQLを発行して更新対象をCSVで抽出する。抽出したCSVデータをPythonプログラムで変換し、データを更新するSQL文を自動で作成する。
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現在は、住所データの変換に取り組んでいる。日本郵便のホームページからCSVファイルをダウンロードして、VB(Visual Basic)で作った変換プログラムで変換し、これを反映している。今後は、Pythonプログラムを作成する予定である。
生産設備の課題をデジタルツインで解決
組み込みソフトウェア事業などを営むヴィッツ(本社:愛知県名古屋市)は、生産設備の課題を、デジタルツイン(仮想工場)で解決する仕組みを構築している。要素技術として、IoTデータ(位置データ)を正確にトラッキングする技術、設備の安全標準やルールからの逸脱を予測する技術、AIによる群制御、などを利用する。
現在は、それぞれの要素技術を育成している途中である(図3)。すでに、仮想工場を動かすための仮想サーバー環境は完成済み。仮想工場を活用したアプリケーションとして、効率的な生産ラインや動線を自動で作成することや、原料供給の最適化、などを考えている。
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AIで受注や在庫消費を予測
女性向け下着の通信販売会社ピーチ・ジョン(本社:東京都渋谷区)は、AIを使った受注予測(EC、店舗)、在庫消費予測、顧客行動分析、SNS分析、市場分析、トレンド分析などに取り組んでいる。
第1回中間報告(2021年2月)までの進捗として、分析対象として扱えるデータを調査した。購買情報、在庫情報、ECサイトの検索データなどがあった。第2回中間報告(2021年5月)までに、引き続き分析対象として扱えるデータを調査した。Pythonを使って、クラスタリングとデータの分類、相互相関係数などを調査した(図4)。
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現在では、販売前の新商品に関する需要予測として、自然言語分析に取り組んでいる。ECサイトに掲載している商品の説明文テキストをベクトル化して、コサイン類似度を測る。これにより、商品同士の類似性を、販売前に知ることができる。
●Next:平井精密工業、水上、アズワン、レニアス、ユーネットランスの取り組み
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