Red Hat Enterprise LinuxのクローンOSとして採用実績が多かったCentOSだが、最新版の「8」を最後に開発プロジェクトが終了してしまった。その背景や今後の対応策について、さくらインターネットとサイバートラストの関係者が対談した。OS更新にからむ表層的な問題のみならず、日本企業の根深い問題も見えてきた。今、DXを標榜するリーダーは何を念頭に置かなければならないのか──。
業務アプリケーション等の稼働環境として多くの企業が利用しているLinux OS。中でも、これまでの採用実績が多いものとしては「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)と、そのクローンOSとして知られる「CentOS」がある。後者は基本的に無償で使えることから多くの支持を得ていたのだが、最新版の「CentOS Linux 8」を最後に開発プロジェクトが終了し、サポートは2021年末をもって終了した。
CentOSからの移行先として存在感を増しているのが、国内ベンダーのサイバートラストが開発しリリースしているRHELクローンOS「MIRACLE LINUX」だ。2021年10月にリリースした現行版のMIRACLE LINUX 8.4からは、CentOSと同様にライセンス費用無償で使えるようになっている。
そもそも、RHELクローンOSとはどのようなものなのか、なぜCentOSの開発プロジェクトは終了したのか、ユーザー企業はこれからどう対処していけばよいのか──。今回、MIRACLE LINUXをクラウド型で提供しているさくらインターネットの新人営業担当者が、開発提供元のサイバートラスト担当者にLinuxに関わる様々な疑問をぶつけた。そのやり取りは、読者諸氏の混迷を解きほぐすのにもきっと役立つはずだ。
企業システムに浸透したRHELとCentOS
外山氏:さくらインターネットの営業部に配属されて数カ月が経った外山裕雅です。ここのところ、お客様からCentOS 8のサポート終了について相談を受けることが多いのですが、そもそもCentOS 8のサポート終了とは、どういうことなのでしょうか。背景や状況を教えてください。
鈴木氏:サイバートラストでOS事業全体を統括している鈴木庸陛です。まず、RHELとCentOSの成り立ちについて、簡単に説明しましょう。2000年から2010年にかけての10年間を振り返ると、企業の情報システムにLinuxがどんどん浸透していった時期と言えます。その動きを牽引したのがRHELです。国内のサーバーベンダー各社が、RHELを搭載した「プリインストールモデル」をこぞって販売。結果的にRHELのシェアが高まり、一方でSIerサイドにもRHELでシステムを構築するノウハウが蓄積されることになりました。
この市場に、OSSコミュニティによって開発された無償のCentOSが入ってきたのです。CentOSはRHELと互換性があり、ユーザーから見れば、RHELと同じように使えます。CentOSプロジェクトが始まったのは2004年ですが、RHELが普及した2010年ころから「CentOSでも問題ないんじゃないか」という認識が広がってきたんですね。背景には、業務システムに関わるコストをできるだけ抑えたいとのユーザー側の思いがありました。
ところが、2021年末をもって、最新版のCentOS Linux 8のサポートが終了してしまいました。CentOS Linuxの新版も開発されることはありません。 RHELクローンとしてのCentOS Linuxのプロジェクトは終わったのです。やむなくユーザー企業は、CentOSの代わりとなるRHELクローンOSを探すことになりました。
RHELクローンOSの登場と期待の高まり
外山氏:そもそもRHELクローンOSとはどのようなものでしょうか。
弦本氏:サイバートラストでLinuxのエバンジェリストをしている弦本春樹です。2021年3月までは開発エンジニアでした。米Red Hatが公開しているRHELのソースコードからRHELの商標などを取り除いてリビルドすれば(コンパイルしてバイナリを作り直せば)、理論上はRHEL互換のバイナリができます。そうして世に登場したLinuxディストリビューションの一つがCentOS。RHELの商標をCentOSの商標に挿し替え、NTPサーバーの参照先やダウンロード元URLといったディストリビューションに固有の情報を書き換え、リビルドしたものなのです。
外山氏:RHELクローンOSとしてのLinuxディストリビューションは数々あると聞きますが、その中でも、CentOSのユーザーが特に多かったのは何故なのでしょう?
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