富士通と米Carnegie Mellon University(カーネギーメロン大学)は2022年2月8日、デジタルツインで社会や経済の課題を解決する共同研究を開始すると発表した。行動経済学や行動科学などの人文社会科学と計算機科学を融合させた技術によって、人々の動きを高精度に予測してデジタルに再現する。この上で、人々の行動特性に基づく未来の行動や、起こり得るリスクを可視化し、多様な施策の立案を支援する。
富士通とカーネギーメロン大学は、デジタルツインで社会や経済の課題を解決する共同研究を開始する(図1)。行動経済学や行動科学などの人文社会科学と計算機科学を融合させた技術によって、人々の動きを高精度に予測してデジタルに再現する。この上で、人々の行動特性に基づく未来の行動や、起こり得るリスクを可視化し、多様な施策の立案を支援する。
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共同研究ではまず、人や物、経済、社会の相互作用をデジタルに再現した“ソーシャルデジタルツイン”の基盤となる技術の研究開発に取り組む。狙いは、これらの実態を把握することで、多様で複雑化する様々な課題の解決に向けた施策立案などを支援することである。
例えば、2次元情報から3次元情報を推定するニューラルレンダリング技術を用いて、カメラ映像からは設置角度や障害物との重なりが原因で部分的に見えない状態の人の動きを、仮想的に生成する。これにより、人の動きを的確に捉えることが可能になる。好みや状況によって変化する人々の行動特性に関する知見とAIを融合し、正確に人の行動を予測する技術も開発する。
この上で、人々の行動と物や経済、社会との関係性を、実世界の変化に追従してデジタルに再現するためのヒューマンモデルとソーシャルモデルを構築し、ソーシャルデジタルツイン上で各種施策の事前検証を進める。これにより、社会課題を解決する有効な施策を効率よく導く。将来的には、人々の行動変容を促す働きかけを可能にするなど、ソーシャルデジタルツインと実社会が、より良い社会の実現に向けてともに進化する世界を実現する。
開発した技術は、環境、交通渋滞、経済効率などの都市問題の解決に向けた実証実験に適用し、効果を検証する。例えば、ソーシャルデジタルツイン上で、都市の道路網における交通量の実データを活用し、日々変化する交通需要を動的に把握できるモデルを構築する。交通量に合わせた車両規制や、通行料を変動させるロードプライシングなどを事前検証することで、都市交通の施策の有効性を検証する。
今後は、ソーシャルデジタルツインを活用した交通渋滞や経済効率の検証だけではなく、CO2排出量の削減などの環境問題の解決と、都市交通の利便性を向上させるきめ細かな施策などの検証を進めていく。新型コロナウイルス感染症などのパンデミック抑止と経済成長を両立させる施策の実施や、状況に応じた医療資源の最適配分により人々の安全・安心な暮らしを守るサステナブルな次世代のスマートシティーの実現を支援していく。