アイ・ティ・アール(ITR)は2022年3月24日、国内におけるERP(統合基幹業務システム)の提供形態別およびパッケージ製品の運用形態別での市場規模推移と予測を発表した。2020年度のERP市場は、コロナ禍の影響で前年度比6.9%増とやや低調だった。2021年度は、システムの刷新/新規構築共に増加傾向にあり、2ケタ成長を予測している。
アイ・ティ・アール(ITR)の調査によるとERP市場の2020年度の売上金額は1229億円(図1)。前年度比6.9%増と、近年ではやや低い伸びだった。同社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大による営業活動の低下や案件の先延ばしなどを要因に挙げている。
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2021年度はベンダー全般的に復調傾向にあり、前年度比14.6%増を予測している。老朽化したERPシステムのリニューアルに加えて、2022年4月に施行する電子帳簿保存法改正への対応や、昨今のDXブームを背景とした新規構築が拡大傾向にあることから、CAGR(年平均成長率、2020~2025年度)は11.6%を予測している。
パッケージとSaaSの提供形態別で比べると、2020年度のパッケージ市場は前年度比2.4%減のマイナス成長になった。これに対して、SaaS市場は前年度比27.2%増と高い伸びを示した。主要ベンダーが新規案件においてはSaaSの販売を推進しており、既存のパッケージ導入ユーザーに対してもSaaSへの移行を徐々に進めていることから、パッケージ市場のCAGR(2020~2025年度)が0.2%と低調であるのに対して、SaaS市場のCAGRは24.1%の高い成長率を予測している。
パッケージ市場をユーザー企業の運用形態別に見ると、オンプレミスは2019年度から2021年度にかけて市場規模が縮小した。一方、IaaSは20%前後の高い伸びを維持している。2022年度以降も、この傾向が続くと予想している。近年は基幹システムにIaaSを選択する企業が増加傾向にあり、ERPパッケージの稼働環境としてもIaaSを選択する企業が増えている。
「働く環境が多様化したことや、紙を主体とした旧来のビジネスを変革する必要性に迫られた企業が多いことから、企業は基幹システムの刷新においてクラウドERPの優先度を高めている。また、財務情報だけでなく、非財務情報やSDGsなどの指標が重視されるようになったことも、クラウドERPの市場拡大の追い風となっている」(ITR)