[調査・レポート]
「メタバース/AR/デジタルツインがもたらす大変化に備えよ」─アクセンチュアがテクノロジービジョン2022を発表
2022年3月29日(火)神 幸葉(IT Leaders編集部)
アクセンチュアは2022年3月25日、年次調査レポート「テクノロジービジョン2022」(同年3月16日発表「Accenture Technology Vision 2022」の日本語版)を発表した。同レポートでは、メタバースやAR(拡張現実)、ブロックチェーン、デジタルツイン、エッジコンピューティングなどの新興テクノロジーによって、従来の事業計画とはまったく 異なる未来に向かって企業間競争が始まっていることを紹介している。メタバースについては専門組織を設立し、その体験がもたらすビジネスへの影響などを調査・研究しながら顧客企業における活用を支援していくという。
アクセンチュアは、世界のテクノロジートレンドに関する年次調査レポートの最新版「テクノロジービジョン2022」を発表した。今回のレポートは、25人以上の有識者で構成される外部諮問委員会からの知見を参考にして、テクノロジー分野の有識者を対象にインタビュー調査を実施。同時に、24000人の消費者、日本を含む35カ国、23の業界、4650人の上級役職者/役員を対象にアンケート調査を行っている。
「メタバースで会いましょう – ビジネスを再創造するテクノロジーと体験の融合」と題した今年のレポートでは、メタバースやAR(拡張現実)、ブロックチェーン、デジタルツイン、エッジコンピューティングなどの新興テクノロジーの台頭と、それらがもたらす人々の体験や企業競争の変化を紹介している。さらに、このトレンドの進展により、ビジネスや組織運営のあり方、顧客との繋がり方が再創造されつつあることを指摘している。
ビジネス環境は再創造へ─4つのテクノロジートレンド
テクノロジービジョン2022では、「再創造に向かう」とする変化の激しいビジネス環境下において、企業が押さえるべき4つのテクノロジートレンドを挙げている。
トレンド1:WebMe――メタバースの中の「私」
同レポートでは、デジタル世界におけるプラットフォームの相互運用性やデータの可搬性は十分ではないが、メタバースやWeb3(新世代の分散型インターネットの呼称)により、インターネットは形を変えつつあると述べている。
今回の調査では、調査対象者の95%が「将来のデジタルプラットフォームでは一貫した体験を提供し、異なるプラットフォームや空間における顧客データの相互運用を実現する必要がある」と回答。テクノロジーの進歩は長期的戦略の検討材料や野心的な企業ビジョンの後押しになっているという(図1)。
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またメタバースについて、71%が「自社にポジティブなインパクトをもたらす」と回答、42%が「画期的もしくは革新的なものになる」と回答している(図2)。
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トレンド2:プログラム可能な世界――世の中をパーソナライズする
今回の調査では、92%が「先進企業が仮想世界の垣根を取り払い現実に近づけることで、仮想世界と現実世界の一貫性に対するニーズは高まるだろう」と回答した。また、現実世界をプログラミングすることが競争上の重要な要素となり、拡張現実が業界にもたらす影響についても多くの調査対象者が意識している傾向がある(図3)。
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同レポートでは、5G、アンビエントコンピューティング(Ambient Computing、注1)、AR、スマートマテリアル(知能材料)といった新興テクノロジーの進化により、デジタル環境は現実世界に編み込まれていくと予想。人々と世の中がつながる方法や内容変化だけでなく、人々の感覚や交流方法、それらをコントロールする方法が一新されると述べている。
注1:アンビエントコンピューティング(Ambient Computing)は、IoT/センサーネットワーク、スマートフォン/ウェアラブルデバイスなどからの多様な情報、システムに蓄積された行動パターン情報などをベースに、人に代わってデバイスやシステムを操作する仕組みやモデルのこと。身近な例では、Amazon Alexa、Googleアシスタント、Microsoft HoloLens/MR(Mixed Reality)などがある。
トレンド3:アンリアル――本物の世界を人工的に作る
AI関連の技術・手法が進展し、消費者が、企業のコンテンツ、アルゴリズム、ブランドに関して、「信頼のおける本物であるかどうか」を重視する際、AIの活用のあり方はこれまで以上に企業の最重要課題となっていくと調査対象者の多くが感じているという(図4)。今回の調査では、「データの出処や偽りのないAI活用の立証に取り組んでいる」という回答が96%を占めた。
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トレンド4:不可能を可能にするコンピューティング――新たなマシンが可能性を切り開く
量子や生物学に基づくコンピューティングなどの手法により、従来は費用や効率性が見合わなかった困難な課題解決が可能になり、競争や価値創出、協業のあり方が大きく変化すると同社は述べている(図5)。
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今回の調査では、94%が「難解に見える課題の解決に向けて次世代コンピューティングを活用することが長期的な成功を左右する」と答えた。
同レポートでは、先進的な企業が、市場における不確実性を対処し、遍在するメタバースの中で競争を始めている例として、米大手食品会社のMars(マース)を挙げている。
同社は、マイクロソフトやアクセンチュアと協力して、メタバースに関連する技術としてデジタルツインを活用。廃棄物削減、業務運用の迅速化や能力向上、サプライチェーン全体における従業員のリアルタイムな意思決定を可能にしたという。現在では気候や災害などの変動要因を織り込んだデジタルシミュレーションにより、原産地から消費地に至るまでのさらなる可視化を図っているという。
●Next:600件の特許と10年以上の経験を基に、メタバース専門組織を設立
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