米IBMは2022年4月5日(米国現地時間)、メインフレームシステムの新製品「IBM z16」を発表した。国内では同年5月31日から出荷する。IBM z16の特徴は大きく2つある。1つは、AI推論用のアクセラレータをオンチップで搭載した新プロセッサにより、基幹業務においてリアルタイムにAI推論させられるようにしたことである。もう1つは、暗号処理のハードウェア機構を強化し、耐量子暗号を使えるようにしたことである。日本IBMは同年2月6日、発表会を開いて新製品の特徴を説明した。
「IBM z16」(写真1)は、米IBMが開発したメインフレームシステムの新製品である。同社のIBM Zシリーズは、z13、z14、z15と、新製品投入のたびにデータを暗号化する機能を向上させてきた。今回のz16では、暗号化機能の強化に加えて、AI推論処理能力を高めている(関連記事:「IBM Zは垂直統合だからシステム停止時に高速で復旧できる」─IBM Z Software担当副社長)。
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プロセッサーのオンチップにAI推論用のアクセラレータを搭載し、基幹業務においてリアルタイムにAI推論処理を実行できるようにした(図1)。チップには、8個のCPUコアとAI推論用アクセラレータ(AIU)が搭載されている。AIUは各コアとL3キャッシュを介してデータを扱う。推論処理のレイテンシは1ミリ秒程度で、AIUの数を増やす(最大32個)ことで、処理遅延なく推論処理の件数を増やせる。1日あたり最大3000億の推論要求を遅延なく実行するとしている。
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リアルタイム推論機能により、不正取引などを未然に防ぐ。日本IBMが紹介した米国の銀行におけるユーザー事例では、取引にAI推論を適用して不正を検知している。「第1段階では、外部のPCサーバーで推論を実行する仕組みだったため、遅延の関係で全トランザクションの20%未満にしか推論を適用できなかった。第2段階で推論処理をメインフレームに移植して改善した。今後は、z16のAIUを使い、全トランザクションに推論を適用する予定である」(日本IBM)。
●Next:z15からさらに向上した暗号化機能
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