パンデミックやインフレ、国家間紛争などのグローバルの動きに伴い、日本企業経営を取り巻く環境も大きく変化している。日本オラクルが2023年1月31日に開催したクラウドアプリケーションの説明会では、人的資本経営の重要性にフォーカスを当てて、グローバルの動向や日本企業の課題、この分野におけるOracle Cloud ERP/HCMの新機能などを紹介した。
5年後のビジネスを見据えた人的資本経営を
日本オラクル 常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括の善浪広行氏(写真1)は、今日の企業を取り巻く課題について、次のように語った。
「産業構造が変わっていく中で、ビジネスモデルやパーパス、事業ポートフォリオなどをどう定め、何に投資していくかが大きなテーマとなっている。特に、事業と人材のポートフォリオの最適化が求められていく」
カギを握るのが、人的資本経営、すなわち「人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」(経済産業省)への取り組みだという。
善浪氏は、人的資本経営をめぐる動きとして、グローバルではサステナビリティ、多様性などの開示義務化が進んでいることを示した(図1)。日本においても、有価証券報告書におけるサステナビリティ全般に関する開示や人的資本、多様性に関する開示ガイドラインが公表されている。「複数のステークホルダーに適切な情報を開示し、企業価値評価を向上させることが求められていく」(善浪氏)
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善浪氏は、「高度経済成長期のような終身雇用が当たり前ではなくなった現在では、人材も流動的になっている。現在だけでなく、5年後のビジネスを見据えた人的資本経営が必要である」と述べ、そのうえで「経営戦略と人事戦略を連動させ、人的資本経営を包括的に支えられるオラクルのアプリケーション」(同氏)と、この分野における同社の優位性を強調した。
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ERPとHCMで経営戦略と人事戦略を連動させる
発表会の後半、日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 ソリューション・エンジニアリング事業本部 HCMソリューション部 部⾧の矢部正光氏(写真2)が登壇。オラクルが上述の課題にどう応えるかについて説明した。
矢部氏は、同社の考え方と提供するクラウドアプリケーションを、「As Is/To Beギャップの定量的把握」「従業員のエンゲージメントの向上」「リスキリング・人材育成」の3つの軸から紹介した。
まず、As Is/To Beギャップの定量的把握については、人材アジェンダと経営戦略のつながりを意識することの重要性を、経済産業省が取りまとめた「人材版伊藤レポート」の提言内容を示しながら指摘した。
同社のクラウドアプリケーションの中で、経営戦略と人事戦略の連動を可能にするのが「Oracle Cloud ERP」「Oracle Cloud HCM」である。ERPとHCMを組み合わせることで、事業戦略立案時の需要・供給の分析や各種シミュレーションを行える。例えば、予算管理と連動した人事戦略の立案、需要/供給予測からのギャップの可視化・分析、各種要因に基づくシミュレーション、従業員のスキル状況の確認などである。
「しかしながら、定量的把握の必要性を理解しながら着手できていない企業は多い」と矢部氏は述べ、そうした企業に「Oracle Fusion HCM Analytics」を提案しているという。製品名のとおり、定義済みのダッシュボードやKPIの下、定量化の把握に関する分析を支援する。 KPIは、2021年リリースの初期バージョンでは約200項目だったが、最新版では約600項目まで拡充している(図2)。
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