米クオンティニュアム(Quantinuum)は同社のイオントラップ型量子コンピュータが続けて2つの記録を達成したと発表した。米IBMが開発したベンチマーク「量子ボリューム(Quantum Volume:QV)」で1万6384および3万2768を達成したという。2023年3月9日、日本法人のクオンティニュアムが国内で発表した。
米クオンティニュアム(Quantinuum)は、同社のイオントラップ型量子コンピュータが、続けて2つの記録を達成したと発表した。量子コンピュータの性能を示す指標として使われる量子ボリューム(Quantum Volume:QV)で1万6384および3万2768を達成。今回の性能向上で、量子ボリュームの測定記録を3年弱で8回更新した。同社は「量子ボリュームを毎年1ケタずつ増加させる」という公約を発表しており、これを実現している(図1)。
拡大画像表示
今回達成した5ケタの量子ボリューム値(16384および32768)は、低いエラーレート、量子ビットの数、長い回路といった特徴から、リアルタイムの量子エラー訂正(QEC)にとって有益だとしている。量子エラー訂正は大規模な量子コンピューティングにおいて不可欠な要素であり、その探究を現在のハードウェアで行うことができれば、大規模なデモンストレーションをより早く行える可能性があるとしている。
同社は、量子コンピュータ「H-Series」に関する技術的改善として、デバイスのレーザーの位相ノイズの低減、2量子ビットゲート誤差とメモリー誤差の低減、キャリブレーションプロセスの要素の改善などを挙げ、これらの詳細を明らかにしている。これらの改善により、アルゴリズムの実行時間が短くなり、量子エラー訂正コードの実行能力が向上するという。
なお、クオンティニュアムは、米ハネウェルクオンタムソリューションズ(Honeywell Quantum Solutions)のハードウェアと英ケンブリッジクオンタム(Cambridge Quantum)のミドルウェアおよびアプリケーションを事業統合して生まれた量子コンピューティング企業である。エネルギー、物流、気候変動、健康などの分野で、差し迫った問題を解決するための商業的な量子アプリケーションを作り出すことに重点を置いている。米国、欧州、日本に拠点を持ち、350人以上の科学者を含む480人以上の従業員を擁している。