[市場動向]
脱炭素支援SaaSのTerrascopeが日本法人を設立、国内企業のサステナビリティ/ネットゼロの取り組みを支援
2023年6月22日(木)神 幸葉(IT Leaders編集部)
脱炭素化支援プラットフォームをSaaS型で提供するシンガポールのテラスコープ(Terrascope)は 2023年6月15日 、日本法人の設立と日本市場でのサービス開始を発表した。三菱商事、日本テトラパック、みずほ銀行と提携し、企業のサステナビリティとネットゼロの目標達成を支援していく。
シンガポール発の脱炭素支援プラットフォーム
テラスコープ(Terrascope)は、シンガポールに本拠を置く農業総合商社のオーラム・インターナショナルグループ傘下のSaaSベンダーである。オーラム・インターナショナルが過去10年間にわたり蓄積した農業サプライチェーンのノウハウを基に、2022年6月に設立された。新たに進出する日本市場では、主に食品・農業、消費財、テクノロジー業界を顧客ターゲットに、SaaS型の脱炭素化支援プラットフォーム「Terrascope」を提供して、脱炭素/ネットゼロ(注1)実現への取り組みを支援する。
テラスコープ CEOのマヤ・ハリー(Maya Hari)氏(写真1)は、「日本企業がグリーン化を進めようとする姿勢は非常に頼もしいが、ネットゼロを実現するための方法と行動にはまだギャップがある」と指摘。そのギャップは「脱炭素化への取り組みを通してビジネスの価値を高めることができる大きな可能性でもある」として、日本市場のポテンシャルへの期待を表明した。
ハリー氏は日本企業の環境への意識の高さを表すものとして、調査会社の英Verdantixとの共同調査の結果を紹介した。それによると、日本企業の85%が温室効果ガス(GHG:Green House Gas)排出量削減の目標を掲げ、うち30%はGHG排出量削減に対する国際規格のSBTi認証を受け、スコープ1、2、3(注2)の基準で活動しているという。
注1:ネットゼロは、大気中に排出される温室効果ガス(GHG)と除去されるGHGが同量でバランスが取れている状態を指す。
注2:GHGスコープは、GHG排出量を算定・報告する際の国際規準「GHGプロトコル」における分類。スコープ1(事業者による直接排出)、スコープ2(他社から供給された電気、熱などの使用に伴う間接排出)、スコープ3(事業活動に関連する他社による間接接排出、サプライチェーン全体の排出量)に分けられる。
GHG排出量測定、削減計画策定・実施を一貫して支援
テラスコープが提供する脱炭素支援SaaSプラットフォームは、企業のGHG排出量測定、削減計画、実施について、データサイエンスやAI(マシンラーニング)を駆使して、サプライチェーン全体にわたって脱炭素化を支援するものだ(図1)。
GHG排出量の測定では、スコープ1、2、3における排出量ベースラインを設定して削減計画を策定し、その実施状況の追跡を可能にする。これらの作業には複雑なデータ取り込みが必要だが、プラットフォームがそれを容易にするという。その後、バリューチェーン内のデータギャップを自動識別して解消する。AIによるデータの推計に加え、排出量データのない製品も構成部品ごとに分割して排出量を推定する。データ評価では、データプロファイリングにより、排出量ベースラインの信頼性向上、データ収集における改善可能な領域を特定し、外部監査に備えることができる。
削減計画の策定のために、プラットフォーム上で排出のホットスポット(排出量の多い部門、場所)などを特定し、削減策の実施で生じる影響のシミュレーション予測と評価を行う。また、AIを用いたデータの取り込みとデータイメージの構築機能により、排出量の変化を四半期ごとに把握でき、年度途中での調整も可能。目標を追加した後は、テラスコープのチームが進捗状況の追跡サポートなども行う。
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