インターネットイニシアティブ(IIJ)は2023年6月27日、「マルチプロファイルSIM」を、ネットワーク機器やIoT端末をの事業者に向けて提供開始した。1枚で複数の携帯電話網に接続可能なSIMカードである。IoT端末側で所定のコマンドを実行することによって、通信プロファイルを切り替えられる。携帯電話網の通信断を検知してプロファイルを切り替えるプログラムを組み込んでおくことで、人手を介さずにサブ回線に移行して通信を維持する。ユーザーとして、コネクシオがIoTゲートウェイに採用している。
IIJの「マルチプロファイルSIM」は、カード1枚で複数の携帯電話網をソフトウェア的に切り替えて利用可能なSIMカードである(図1)。ネットワーク機器やIoT端末を扱う事業者に向けて提供する。IoT機器のハードウェアの設計を変更することなく(SIMスロットを2つ用意することなく)、複数の通信プロファイルを利用できるようになる。
IoT端末に実装したプログラムから簡易なコマンドを送るだけで、通信プロファイルを切り替えられる。既存の端末を使いながら、ソフトウェアの小規模な改修だけで複数の通信プロファイルを利用できるる。例えば、携帯電話網の通信断を検知したことをトリガーに通信プロファイルを切り替えるプログラムを組み込んでおくことで、人手を介さずにサブ回線に移行して通信を維持可能である。
従来は、複数の通信網を切り替えて使う場合、複数のSIMカードを機器に搭載する方法(デュアルSIM)がとられてきた。この場合、SIMカードを取り付けるSIMスロットを機器に複数用意する必要がある。一方、マルチプロファイルSIMの場合は、1枚のSIMカードしか使わないため、ハードウェアの設計を変更する必要がない。
1枚のSIMで複数の携帯電話網に接続する手法にはローミングもあるが、ローミングは常に有効というわけではない。ローミング事業者が運用する加入者データベースが正常に動作しなくなるような障害が発生した場合は、ローミングサービスも利用できなくなる。
今回提供するマルチプロファイルSIMは、それぞれのプロファイルの加入者データベースが独立している。片方のプロファイルを管理する加入者データベースに障害が発生した場合でも、もう片方のプロファイルに切り替えて通信を継続可能である。
IIJは、SIMカードを開発後、2022年10月からコネクシオとPoC(概念実証)を行ってきた。今回、コネクシオのIoTゲートウェイ「CONEXIOBlackBear」が正式に採用した。同製品は、工場現場に設置したセンサーからデータを収集するためのIoTゲートウェイ。今回のSIMカードを搭載することで、主回線の通信断が発生した際に自動でサブ回線に切り替えられるようになった。