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3カ月で26万利用、パナソニック コネクトが明かす自社開発AIアシスタント「ConnectAI」の運用成果

運用から見えてきた課題解決を通じ、“自社特化型AI”の開発を目指す

2023年7月12日(水)神 幸葉(IT Leaders編集部)

パナソニック コネクトは2023年6月28日、説明会を開き、社内で活用しているAIアシスタントサービス「ConnectAI」の運用成果と今後の展開について解説した。ConnectAIは、米OpenAIの大規模言語モデル「GPT」をベースに自社開発したもので、同年2月から国内の全社員約1万3400人に展開している。3カ月の運用を通じて見えてきた課題への解決を通じて、“自社特化型AI”の開発・活用を進め、10月以降にカスタマーサポートセンター業務への適用を目指す。

3カ月で26万件、想定の5倍以上の活用

 パナソニック コネクトが2023年2月より運用する、ChatGPTを利用する自社開発のAIアシスタントサービス「ConnectAI(旧称:ConnectGPT)」。目的は、生成AIによる業務生産性向上、社員のAIスキル向上、シャドーAI利用リスクの軽減で、国内全社員約1万3400人が業務において活用する。

 説明会ではパナソニック コネクト IT・デジタル推進本部 戦略企画部 シニアマネージャーの向野孔己氏(写真1)がサービス開始後の3カ月の活用実績を示した。

写真1:パナソニック コネクト IT・デジタル推進本部 戦略企画部 シニアマネージャーの向野孔己氏

 向野氏によると、ConnectAIの運用を開始した当初は、社員数、社内システムなどから勘案し、1日1000件程度の利用を想定していた。しかし、ふたを開けてみると3カ月間の利用回数は26万件、直近1カ月の営業日でみると1日平均800件もの利用があるという。

 AIの回答に対して社員が評価できる仕組みも導入している。社員評価は、3カ月平均で5点中3.6点。運用開始当初は大規模言語モデル(LLM)にGPT-3.5を利用していたが、ChatGPT、GPT-4とLLMの刷新のたびに回答精度が上がり、伴って社員からの評価も上がっているという(図1)。

図1:LLMの刷新に伴って社員の評価も上がっていった(出典:パナソニック コネクト)
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明確な成果で「社員が日常的に利用する生成AI」へ

 ConnectAIは、勤怠管理ツールなどとは違い社員の利用は必須ではない。にもかかわらず、社員による利用は増え続けているという。「当初、ITをはじめとする技術関連職の利用を主に想定していたが、キャリアに関する質問など、想定していなかった活用も多い」(向野氏)。

 図2は、2023年4月の2週間で、社員が評価を付けたプロンプトを基にした、実際の利用ケースの内訳だ。約6割が「質問」で、以下「プログラミング」(21.4%)「文書生成」(10.1%)「翻訳」(4.9%)と続く。なお、この集計自体もChatGPTが約5分で行ったという。

図2:実際の利用ケース分類と社員評価(出典:パナソニック コネクト)
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 向野氏は実際の業務において、ConnectAIの活用が生産性向上につながった例を2つ紹介した。

 1つ目はプログラミング業務のコーディング前のチェックだ。以前は事前準備として複数拠点のデータを収集するのに約3時間かかっていたが、ConnectAI を活用することで、5分に短縮された。

 2つ目は社内広報業務のアンケート分析である。約1500件のアンケート結果を分析するのに約9時間かかっていたが、ConnectAI活用により6分に短縮されている。

3段階の不適切利用検知システムを構築

 ConnectAIの不適切な利用を検知する仕組みとして、OpenAIの公式チェックツール「モデレーションAPI」、マイクロソフトが提供する「コンテンツフィルター」、ChatGPT自体が備える検知機能の3段構成をとっている。これらの検知に引っかかったものは人間の目視によるチェックを行うことになっている。

 パナソニック コネクトによると、3カ月・26万件の利用のうち、検知システムに引っかかったのはわずか84件。これらの質問を目視でチェックしたところ、重大な過失につながる利用は0件であったという。

 向野氏は、具体的に検知に引っかかった質問を明かした。「電気分野での自殺回路の意味を教えてほしい」「寄生インピーダンスとは何か」「切削加工で四角に穴を開ける方法を教えてほしい」といったものだ(図3)。「いずれも製造業では一般的な質問ではあるが、検知の仕組みでは暴力的、不適切と判断された可能性がある」(向野氏)。

図3:不適切な利用として検知された例(出典:パナソニック コネクト)
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●Next:セマンティック検索の手法を適用し、“自社特化型AI”を追求

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