大規模IT環境向けのセキュリティ製品を開発・提供するウィズセキュア(WithSecure)は、今日のサイバーセキュリティの課題を挙げ、「新しいセキュリティスタンダード」への転換を訴えている。2024年2月28日に開いた説明会で、統合セキュリティプラットフォーム「WithSecure Elements」をはじめとする主要製品、セキュリティ専門家とユーザー企業がサイバー脅威への“共闘”で臨むマネージドサービスなどを紹介した。
分社後1年半で黒字化するも「変革の途上」
大規模IT環境向けのセキュリティ製品を開発・提供するウィズセキュア(WithSecure)。2023年のグローバルでの売上は前年比6%増の1億4281万ユーロ(約228億4800万円)。エフセキュア(F-Secure)から分社し、現在の体制となった2022年第1半期から持続的に売上を伸ばし、約1年半で黒字化を達成した。
ウィズセキュアで最高マーケティング責任者(CMO)を務めるアリ・ヴァンティネン(Ari Vänttinen)氏(写真1)によれば、「新しいブランド、ビジネスを立ち上げ、現在は変革の途上にある」という。
売上の内訳はクラウド製品が57.3%、オンプレミス製品が17.1%、コンサルティングが25.6%と、クラウドシフトの方針が数字に現れている(図1)。
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サイバー脅威に対する「3×3戦略」
グローバルのセキュリティベンダーとして、同社は今のセキュリティを取り巻く環境をどう見ているか。ヴァンティネン氏は、「AIや自動化などサイバー犯罪の高度化・産業化」「クラウド、IoT、自動化、AI、リモートワークなど攻撃対象の拡大」「取引先との相互接続が生み出す脆弱性」という3つの脅威・危機に晒されているとした。
「これらの脅威に対するには、まず、必要最小限のセキュリティにシフトすること」と同氏。そして、今後のセキュリティを考えるうえで、欧州で見られるユーザー/ヒューマンセントリックかつ民主的な規制方針(ヨーロピアンウェイ)や、自社のパートナーとの信頼関係といったトピックに目を向けることを提案した。同社では「3×3のビジネス戦略」と呼んでいるという(図2)。
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Co-Securityパートナーシップで日本のユーザーへの支援を強める
日本法人/市場の説明は、2023年11月に日本法人のカントリーマネージャーに就任した藤岡健氏(写真2)が行った。
藤岡氏は、日本市場はグローバル同様に堅調であること、なかでも成長領域として、統合セキュリティプラットフォーム「WithSecure Elements」のEPP(エンドポイント保護プラットフォーム/EDR(エンドポイント検知・対処)、Microsoft 365向けの「Collaboration Protection」、セキュリティコンサルティングを挙げた(図3)。
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藤岡氏は、2024年度の事業戦略として、「新しいセキュリティスタンダードオペレーションの推進」「パートナーとのさらなる協業の推進」「新しいビジネス機会の創出」の3点を掲げた(図4)。
新しいセキュリティスタンダードオペレーションの推進に関しては、Elements EPP/EDRに、セキュリティパートナー各社の知見を活用する「Co-Security Service」(Co-Securityは専門家とユーザーの“共闘”の意味、後述)を組み合わせた対策を顧客に促していく。特に中堅企業のセキュリティをより強固にしていくことに注力するという。また、パートナーと連携し、日本の顧客には重要なポイントであるサービスの日本語対応を進めていく。
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藤岡氏は、国内企業1000社弱を対象にしたサイバーセキュリティ関するアンケート調査結果を示した。調査によると、企業規模によって差はあるが、企業全体のEDR導入率は60%で、半年以内に導入を予定する企業を含めると69%になるという。「多様化するサイバー攻撃による被害の最小化、既存のウイルス対策製品で検知できない侵入や攻撃の検知などを目的として、EDRの必要性がますます高まっている」(藤岡氏)。
一方で、EDRの導入/運用においては課題もある。調査ではEDR導入企業のうち72%が自社でEDRを運用していると回答。しかし、多くの企業が「専門的知見を持つセキュリティ人材の確保が追いつかない」「費用負担に対して効果が感じられない」「重大インシデント発生時に、現状把握に膨大な時間がかかり、被害が拡大してしまう」といった声を上げている。その結果、「EDRを導入してから1年利用して、解約してしまう顧客が十数%いる」(藤岡氏)のが実態のようだ。
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