沖縄県多良間村は、閉域SIM回線を使って離島地区からガバメントクラウドへの接続を想定した実証実験を同年9月11日に実施した。実証実験は、多良間村役場においてネットワンシステムズと創和ビジネス・マシンズが実施し、閉域SIM回線を介してクラウドサービス上にある総合行政情報システムへの正常な接続、有線回線と同等の品質(遅延時間)、冗長性の担保を確認した。ネットワンシステムズが2024年12月4日に発表した。
沖縄県多良間村は、多良間島と水納島の2島からなる地方自治体である。ITベンダーのネットワンシステムズと創和ビジネス・マシンズは2024年9月11日、多良間島にある多良間村役場(写真1)から閉域SIM回線を使って疑似ガバメントクラウドに接続する実証実験を実施した。実験の結果、離島地区においても閉域SIM回線によって十分な品質を担保できることを確認した。
拡大画像表示
ガバメントクラウドを活用するには、閉域性を確保したアクセス回線とクラウド接続サービス、および行政システムに関する知識とノウハウが必要である。「アクセス回線には通信事業者が提供する専用線を利用することが一般的だが、専用線は提供場所が限られ、一般的に距離が長いほど利用料金は高くなる。離島や山間地域においては専用線の回線の調達が難しく、災害時のための冗長化も難しい」(ネットワンシステムズ)
実験では、多良間村役場に設置しているエッジルーターに閉域SIMを挿し、クラウドサービスへの接続を仲介するデータセンター(東京)に接続(図1)。検証用端末から、AWSに構築したガバメントクラウドの疑似環境にある総合行政情報システムを利用した(入力、削除、印刷など)。これらの接続確認とネットワークの遅延時間を計測し、さらに冗長回線への切り替え時間を測定した。
拡大画像表示
ネットワンシステムズは、自治体で培ったナレッジを基に「ガバメントクラウド接続標準設計」を作成している。今回の検証では、接続標準設計に則して実施した。通常であれば設計からガバメントクラウド接続まで2週間必要なところを、標準設計により1日(現地での接続作業は30分)で実施した。
閉域SIM回線を使うメリットの1つは、ケーブルの敷設作業が不要であるため、離島や山間地域でも使えることである。「本庁舎が利用できない場合でも、移動先で接続できる。デュアルSIM回線構成により、有線回線と同等の品質と冗長性を確保できる。コストも専用線より安い回線を選択可能」(同社)という。
なお、デジタル庁は、政府共通のクラウドサービスの利用環境であるガバメントクラウドを利用して「地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化」を推進している。多良間村をはじめ、全国の市町村は、2025年度末までにガバメントクラウドを活用した標準準拠システムへの移行対応を迫られている。