デロイト トーマツ ミック経済研究所は2025年1月28日、国内のローカル5G関連製品・サービスにおける市場規模の推移を発表した。2023年度は前年度比120.6%の170億円と堅調に成長。2024年度は活用場面が明確になってきたことで同133.5%の227億円を見込む。今後、2028年度まで年平均26.0%で成長を続け、2028年度は573億円を予測している。
デロイト トーマツ ミック経済研究所は、ローカル5G関連の製品・サービス市場を調査した。通信機器ベンダーと製品・サービスベンダー計28社を調査し、収録個票の数値、他ベンダーの推計を加味して全体を算出した。また、ベンダーの実績や戦略を分析し、運用方式別、周波数別、コアネットワーク構成別、構成要素別、用途別、業種別で2028年度までの市場規模を予測した。上位ベンダーのシェア動向も分析した。
拡大画像表示
2023年度は、商用化前提でローカル5Gの導入を目指す企業の割合が増え、対前年度比120.6%の170億円になった。製造業、鉄道、港湾、電気、ガスなどのエネルギーインフラにローカル5Gのニーズが集中する一方、総務省の案件で検証していた農業や医療、小売業界からの引き合いは大幅に減っているという(図1)。
2024年度は、PoC(概念検証)から商用展開へと移行するユーザーが増加。一方、ローカル5Gの適用場面については、「工場や倉庫でのAMR(自律走行搬送ロボット)の制御や、港湾やプラントのような広大な敷地での保守・監視などに偏っており、ローカル5Gの用途が徐々に固まってきている」(同社)とした。
「5Gの特徴である高速大容量・超低遅延通信、多数同時接続に対する期待は大きいが、実際のところ、通信リソースの専有性、少ないアクセスポイントでの広域カバー、安定した高品質通信といった部分に対する期待感が高い」(同社)
デロイト トーマツ ミック経済研究所によると、無線LAN/Wi-FiやLTEなど他の通信規格に対して高額だが、通信品質や専有性が求められるクリティカルな領域で広がりを見せているという。こうしたことから、2024年度におけるローカル5Gの製品・サービス市場は、対前年度比133.5%の227億円見込んでいる。
製造など3大業種は商用フェーズに移行
2023年度におけるローカル5G製品・サービスの主要ユーザーは、製造業、鉄道・航空・港湾、電気やガスなどのエネルギーインフラの3業種で、商用利用を前提に導入が増えているという。
「特に、製造業は売上ベースで市場の約4割を占める最大の業種。すでに検証フェーズから商用フェーズへの過渡期に差しかかっている。用途は、最もニーズが高いロボット制御に加え、保守・点検、監視、従業員トレーニングなど多岐にわたる。また、複数建屋への新規ネットワーク構築や多拠点展開など、中期的にも案件規模の拡大が期待できる」(同社)
鉄道では、カメラ映像を利用した運航車両の安全管理、港湾ではクレーン制御やコンテナ管理、施設監視が主な用途という。エネルギーインフラについては、発電所やガスプラントといったプラント施設の監視や保守でローカル5Gを利用している。
「ローカル5Gは広大な敷地をカバーするのに適しており、プラント施設での計画外のシステム停止は大規模な損害をもたらすことから、信頼性の高いローカル5Gへの投資が活発になっている」(同社)