[事例ニュース]
NHKが営業基幹システム開発中止で日本IBMを提訴、両社の見解に相違
2025年2月12日(水)河原 潤(IT Leaders編集部)
NHKは2025年2月4日、営業基幹システムの開発プロジェクト中止に伴い、日本IBMに対し約54億7000万円の損害賠償を求める訴訟を提起したと発表した。IBMが開発方式の大幅な見直しと1年半以上の納期延長を求めたことを契約解除の理由としている。一方、IBMは2月7日の発表で、NHKの現行システムの解析から、提案時に取得した要求仕様書からは把握できない複雑な構造が判明したため、課題および対応策を随時報告し対応を協議してきたと主張。より確実な移行方式に向けた協議を申し入れたがNHKが応じなかったとしている。IBMは、NHKとの協議継続を希望し、訴状の内容を確認した後、裁判の中で見解を主張するとしている。
NHK(日本放送協会)は2025年2月4日、同社の業務システム刷新(開発・移行)プロジェクトの中止に伴い、開発委託先の日本IBMに対し、すでに支払った代金の返還と損害賠償(請求額:54億6992万7231円)を求める民事訴訟を同年2月3日に東京地方裁判所に提起したと発表した(画面1、同社の報道資料)

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NHKは、受信料関連業務を支える「営業基幹システム」を刷新するため、2022年12月に現行システムの使用期限である2027年3月を納期として、日本IBMと、新システム開発・移行の業務委託契約を締結した。
NHKによると、IBMはシステムの開発方式を決定後、1年2カ月以上にわたり業務を進めてきたが、2024年3月に入って突然、大幅な開発方式の見直しが必要であるとNHKに伝えたという。2カ月後の同年5月にはIBMから、納期について1年6カ月以上の延伸が必要との申し入れがあったと述べている。
NHKは、IBMからの申し入れ内容が事業継続に甚大な支障が生じることから、やむをえず業務委託契約に基づいて2024年8月に契約を解除すると共に、IBMに支払い済みの代金の返還を求めてきたという。しかし、その後IBMから代金の返還がなされなかったため、今回の訴訟提起に至ったとしている。
NHKは、「裁判の中でNHKとしての考えを主張し、適切に対応していく。また、システム開発中止に伴う対応はすでに実施しているが、引き続き、業務への影響がないよう必要な取り組みを行っていく」とコメントしている。
NHKの提訴にIBMが異議を表明、協議継続を求める
一方、日本IBMは、NHKの発表から3日後の2月7日、NHKによる訴訟提起の発表に対する声明を発表した。
●Next:IBMが、NHKの現行システムの解析結果から判明した問題点を指摘
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