IDC Japanは2025年2月18日、国内ユーザー企業におけるデジタルスキル育成とナレッジ共有の実態についての調査結果を発表した。これらの取り組みの水準は、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の進捗・成果の水準と強い相関があることが判明した。
IDC Japanは2024年5月、国内のユーザー企業を対象に、デジタルスキル育成とナレッジ共有の実態を調査した。従業員300人以上の企業に所属し、IT戦略策定や予算決裁、IT部門の管理に関わる300人を対象に調査を実施した。
同調査の背景について次のように説明している。「デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴って国内企業においてITやデジタル技術の民主化が進み、従来IT部門が担っていた業務が事業部門や経営層でも対応可能になっている。生成AIやノーコードツールの活用が進み、業務や経営のあり方が変わる中で競争優位性を維持するには、デジタル人材の育成を高度化し、ナレッジを体系的かつ効果的に共有する仕組みの構築が求められている」
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調査結果を見ると、DXに積極的に取り組む「先行‐良好企業」は、スキル育成において、座学だけでなく人を介した育成やAIを積極的に活用していることがわかった。対照的に、「遅行‐不良企業」では社内外の座学の研修に偏り、さらに5社に1社が「スキル育成を実施していない/分からない」と回答。IDCは、「デジタルスキルの育成はDX進展のために不可欠であることを示唆している」と分析している(図1)。
育成の効果や成果を尋ねた調査結果では、「遅行‐不良企業」では20%未満の企業しか一定の成果を実感していないのに対し、「先行‐良好企業」では70%以上が成果を収めていると回答。「注目すべき点として、先行‐良好企業でも30%未満の企業は成果や効果に満足しておらず、さらなる改善を感じている。デジタルスキル育成の困難さが把握できる結果となっている」(同社)。
同社Tech Buyer リサーチマネージャーの鈴木剛氏は、DX戦略の実現には必要なスキルセットを明確に定義し、現状とのギャップを分析したうえで最適な育成計画を実行することが重要と指摘する。「育成においては、座学に加えてDXプロジェクトへの参加など実践的な経験の機会を提供することも不可欠である。育成で得たナレッジをコンテンツとして蓄積し、生成AIなどを活用して共有することで、組織全体の育成とナレッジ共有を促進し、企業文化の変革へとつなげるべきである」。
今回の発表は、同社のレポート「2025年 国内企業のデジタルスキル育成とナレッジ共有の現状」に基づく。同レポートでは、調査結果について、回答者全体への分析に加えて、回答者をDXの進捗や成果の水準で分類し、グループ間で比較分析を行っている。