[調査・レポート]
IT部門の位置づけやスタンスの違いが、業務アプリケーション導入/利用成果に表れる─ガートナー
2025年5月15日(木)IT Leaders編集部、日川 佳三
ガートナージャパンは2025年5月12日、「アプリケーション戦略の策定が日本企業にとって喫緊の課題となる」との見解を発表した。同社は2024年9月、自社の業務アプリケーションの意思決定に関わる責任者・担当者を対象に調査を実施。結果から、組織におけるIT部門の位置づけや取り組みのスタンスの違いが、業務アプリケーションのビジネス成果に明確な違いを生み出していることが判明したという。
ガートナージャパンは、「アプリケーション戦略の策定が日本企業にとって喫緊の課題となる」との見解を発表した。同社は2024年9月、従業員1000人以上の国内企業で、自社の業務アプリケーションの意思決定に関わる責任者・担当者を対象に調査を実施。結果から、組織におけるIT部門の位置づけや取り組みのスタンスの違いが、業務アプリケーションのビジネス成果に明確な違いを生み出していることが判明したという。
調査によると、ビジネス成果を得られている企業には、成果を得られていない企業と比べて、以下のような特徴が見られる。
- ITに対する経営層からの理解が得られており、組織の事業において重要な存在と位置づけられている
- 経営層やユーザー部門、ベンダーなど、ステークホルダーからの信頼が厚い
- 経営戦略や中期経営計画を反映しようとし、対話によって理解を深めるなどの努力をしている
- IT業務環境の意思決定に経営戦略を反映している
バイス プレジデント アナリストの本好宏次氏は次のように述べている。「ビジネス戦略とアプリケーション戦略の整合性をとることは最優先事項だが、日本の企業は体系的なアプリケーション戦略を策定していない。ユーザー部門を巻き込みつつ、ビジネス戦略と整合性の取れたアプリケーション戦略を用意し、ビジネス成果へとつなげていくことが喫緊の課題と言える」。
ガートナーは、企業がアプリケーション戦略を策定するための4つのステップを提示している。
ステップ1:アプリケーションの役割・価値を示す戦略原則を定める
戦略の方向性を示し、組織が重視する戦略上の価値を表すルールやガイドラインとして働く原則は、あらゆる戦略の必須要素となる。戦略の定義と実行には、利害や価値観の異なる多くの関係者の意思決定と行動が伴う。個々の企業に固有で有効な戦略原則を策定するには、アジリティ、コスト、ガバナンスなど考慮すべき事項やKPIのうち、何を重視し、何を見送るかを明確にする必要がある。同時に、見送ったことでもたらされるトレードオフを受け入れる姿勢を示すことも重要となる。
ステップ2:アプリケーションの「健康診断」を実施する
アプリケーションがビジネスと技術のニーズを満たすには、アプリケーションポートフォリオの定期的な検証が求められる。その健全性をチェックするために、ガートナーは「TIMEフレームワーク」(Tolerate:許容、Invest:投資、Eliminate:廃棄、Migrate:移行)を活用し、ビジネス、技術、コストの観点に基づく指標の下、各アプリケーションの適合性を評価することを推奨している。その際、IT部門の関係者に加えてユーザー部門の関係者も交え、どのアプリケーションを優先的に見直しの対象にすべきかについて合意を形成することが重要である。
●Next:だれにとっても分かりやすく、簡潔で力強いアプリケーション戦略を
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