[事例ニュース]
出光興産、原油輸送の配船最適化システムを構築、年間で最大数億円規模の運航コストを削減へ
2025年6月12日(木)IT Leaders編集部、日川 佳三
出光興産(本社:東京都千代田区)は、原油輸送の配船計画を最適化するシステムを構築した。2025年4月から海外の原油を外国航路で輸送するタンカーを対象に段階的に運用を開始している。導入効果として、計画立案時間を最大4割減、年間で最大数億円規模の運航コスト削減を見込む。システム開発プロジェクトを支援するエクサウィザーズが2025年6月6日に発表した。
出光興産は、原油輸送の配船計画をAIで最適化するシステムを構築した。導入に先立って行った実証試験では、海外の原油を外国航路で輸送する配船計画の作成時間を最大40%削減できることを確認。寄港数の削減などにより、年間で最大数億円規模の運航コスト削減を見込んでいる。
出光興産と2022年に業務提携を締結したエクサウィザーズがシステム開発プロジェクトに携わっている。両社はプロジェクトの課題について次のように説明している。
「原油輸送は、石油元売会社にとって大きなコスト要因である。外国航路の配船計画では、港や船、製油所の制約をはじめ多くの条件を同時に考慮する必要がある。これまで熟練者の経験に頼っていた計画判断に対し、運航コスト軸で定量的な意思決定を評価する必要があった」

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図1は、外航船配船計画システムの構成図である。現場の知見を融合したアルゴリズムを開発し、数理最適化モデルが入力されたデータと条件を満たしたうえで原油コストが最小になる配船計画を立案する。
プロジェクトでは、原油の輸送知識を持つ出光興産の熟練者とエクサウィザーズのエンジニアが、二人三脚で配船計画の本質的な要件を整理・設計したという。最適化手法や組み合わせを評価検証し、各種のユースケースに合わせたチューニングを進め、プロセス全体を再設計している。
両社は、実務要件と計算時間の最適さが考慮された、使いやすいシステムを構築できたとしている。広範なユースケースに対応できるように、システムには、さまざまな可能性を考慮して複数シナリオを比較する機能や、最適解をベースに担当者の意思を採用する機能などが備わっている。