[事例ニュース]
名古屋市がFinOpsに着手、AWSコスト管理ツールでガバメントクラウドの費用按分を効率化
2025年6月13日(金)IT Leaders編集部
愛知県名古屋市は、ガバメントクラウド環境でFinOpsを実践し、クラウドコストの管理・最適化に取り組んでいる。メタップスホールディングスのAWSコスト管理ツール「srest」を活用し、事前検証で各業務システムのコストを可視化し、請求/支払業務を効率化できることを確認した。2025年度から本格運用を開始する。メタップスホールディングスが2025年6月10日に発表した。
愛知県名古屋市では、2022年に策定した「名古屋市役所DX推進方針」に基づき、Amazon Web Services(AWS)を基盤としたガバメントクラウド環境への移行を進めている。各業務システムは単独利用方式で構築し、柔軟な運用とガバナンスの強化を両立している。一方、システムごとにAWSアカウントが分かれていることから、運用面で以下の課題があったという。
- クラウドコストの全体像を横断的に把握することが困難
- 費用按分・帳票作成が属人的かつ手作業中心で、検収・支払い業務に大きな工数が発生
- 請求情報はPDF形式であることから、一元管理・集計作業が煩雑
これらの課題を解消するため、FinOpsの取り組みとして、2025年3月にメタップスホールディングスのAWSコスト管理ツール「srest(スレスト)」を導入。事前検証で各業務システムのコストを可視化し、請求/支払業務を効率化できることを確認した。2025年度から本格運用を開始する(図1)。

srestが複数のAWSアカウントのコストデータを統合し、継続的なコスト最適化を支援する。部門やシステム単位で詳細なコスト分析が可能なダッシュボードを備えており、全社にわたるクラウドコストの透明性とコスト判断を支援する。
検証は、各業務システムのコストを可視化し、従来は手作業だった会計別請求額の按分計算・帳票作成などの作業の効率化を目的に行った。各AWSアカウントから請求データを一括で取得し、コスト配分タグに基づいて会計別の金額を自動で算出する仕組みを整えている。タグが付されていないサービスについても、同ツール独自の設定でコストを配賦する。アカウント別/会計別に集計した一覧をCSVデータとして出力する機能も備える。
名古屋市は、検証を通じて、ガバメントクラウド環境下の各クラウドサービスの費用内訳を詳しく確認。結果、一部のサービスで当初の想定を上回る利用料金が発生していることが判明したという。これをきっかけに、ログの保存設定や監視機能の使い方などを見直し、無駄な支出を抑えるための最適化に取り組んでいる。
毎月のクラウド利用額や費用内訳を継続的に監視できるようになったことで、実際の支出データを基に翌年度の予算を見積もれるようになった。現在、担当者の経験に頼らず、データに基づいて予算を算出可能な仕組みの整備を進めている。