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JA共済連、地域貢献活動の支出審査にAIエージェントを活用、照会応答業務を最大50%削減へ

2026年4月1日(水)日川 佳三(IT Leaders編集部)

全国共済農業協同組合連合会は、富士通との協力のもと、AIエージェントで業務を効率化する取り組みを始めた。第一弾として、各県域における地域貢献活動の積立金支出可否の判断にAIを活用する。すでに必要な精度を確認しており、まずは各県本部へのリリースを予定している。AIエージェント基盤「Gemini Enterprise」を提供したグーグル・クラウド・ジャパンが2026年3月31日に発表した。

 全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)は、全国のJA(農業協同組合)と連携しながら、総合保障サービスや各種の地域貢献活動を手がけている。地域貢献活動とは、健康増進や防災、交通事故対策、農機具の寄贈など、JAとJA共済連が組合員や地域住民のために行う活動のこと。このための支出可否を判断している。

 地域貢献活動の支出可否はガイドラインに基づいて判断するが、地域貢献活動は一般的な共済事業と異なり、明確な約款は存在せず、過去事例などと照らし合わせながら個別かつ総合的に検討する必要がある。このため判断に時間がかかっている。

 ガイドラインの解釈が担当者によって異なるため、判断基準に差が生じるリスクもある。これを防ぐため、問い合わせに関する認識を部署内ですり合わせてから回答していたが、文書による照会だけで年間200~300件、電話による問い合わせも毎日数件あり、認識のすり合わせだけでも負担が大きかった。

 今回、この地域貢献活動の支出判断にAIエージェントを適用した(図1)。短期間で成果を出せることや、アジャイル的に対話しながらAIを育てられることなどの要件を満たす基盤として、ノーコード/ローコードでAIエージェントを構築できる「Gemini Enterprise」を採用した。富士通が開発を支援し、2025年7月に着手、業務フローのヒアリング後1~2週間でプロトタイプを完成させた。

図1:JA共済連が構築した、地域貢献活動の積立金支出可否の判断を支援するAIエージェントの概要(出典:グーグル・クラウド・ジャパン)
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 AIエージェントは、Gemini EnterpriseのADK(Agent Development Kit)を用いて構築した。ガイドラインのほか、過去3年分、約600件の照会票(照会内容と回答の記録)をナレッジとして追加した。AIエージェントに新たに照会内容を入力すると、ナレッジを参照し、適切な回答を出してくれる仕組みである。プロトタイプの時点である程度の精度が出ていたが、チューニングを実施し、トータル約1.5カ月程度で必要な精度に仕上げた。

 チューニングでは、照会内容によって検討すべき争点が異なることを考慮し、AIエージェントに照会内容から争点を洗い出させたうえで回答を生成させるようにした。これにより、担当者の思考プロセスに近い回答を生成できるようになった。

 単に過去事例をナレッジとして追加するだけでは、キーワードにヒットした複数の過去事例の「いいところ取り」をしてしまい、文脈のつながらない回答を生成してしまう恐れがあった。このため、照会票データを1つずつ別ファイルとしてナレッジに追加し、文脈を維持した回答を得られるようにした。「この情報が足りていないので教えてください」とAI側から追加情報の提供を促す機能も実装した。

 JA共済連で農業・地域活動支援部地域貢献企画管理グループ主査を務める町田瑞季氏は、開発したAIエージェントについて「単に承認・否決を判定するのではなく、過去事例なども踏まえ、『ガイドラインのこの箇所に合致します、理由はこれです』と判断の根拠を提示してくれる」と評価する。同グループ主幹の市川豪氏も「回答の均質化・平準化が図れる」ことを評価している。

 JA共済連は、システムを本稼働させることにより、照会応答業務負荷を約20~50%削減できることを見込んでいる。まずは各県本部に対してAIエージェントをリリースし、将来的には他部署へも横断的に展開する。また、別部署では新たなユースケースでのPoC(概念実証)も始まっている。「問い合わせ業務に限らず、営業推進、査定、支払いなどでの活用を提案していく。現場担当者自身でAIエージェントを作成・チューニングしていく取り組みも加速していく」(町田氏)。

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