[インタビュー]
大企業が相次ぎ陥落、その裏で何が起きているのか─S2W幹部が語るサイバー脅威とダークウェブの深層
2026年7月3日(金)神 幸葉(IT Leaders編集部)
サイバー攻撃の高度化・巧妙化が進み、従来の事後対応型セキュリティに加え、被害の発生前にリスクを把握・低減するプロアクティブなインテリジェンスへのニーズが高まっている。韓国発のダークウェブビッグデータ分析AI企業であるS2W(エスツーダブリュー)が、2026年6月23日に日本市場への本格参入を発表した。同社の最高製品責任者であるキム・ジェギ氏に、情報窃取から国家の資金稼ぎへと変貌した北朝鮮ハッキンググループの最新動向と、同社が提唱する「予防型セキュリティ」の全貌、日本市場本格参入における戦略などを聞いた。
ダークウェブ特化型AIでサイバー脅威に立ち向かう
2018年に韓国で設立したS2Wは、ダークウェブビッグデータ分析企業だ。ダークウェブ、テレグラム、SNSなどクローズドおよびオープンソースの多様なチャネルにまたがる脅威情報を収集・分析し、サイバー脅威インテリジェンス、ランサムウェア対策、データ分析基盤などを提供する。
ダークウェブに特化した独自の大規模言語モデル「DarkBERT」をはじめとしたコアテクノロジーを基に、サイバーセキュリティ官公庁や政府機関を対象とした安全保障AIプラットフォーム「XARVIS(ザービス)」や、企業向けサイバー脅威インテリジェンスプラットフォームの「QUAXAR(クェーサー)」などを提供している(図1、2)。
図1:S2Wのコアテクノロジー(出典:S2W)拡大画像表示
図2:S2Wのコアソリューション(出典:S2W)拡大画像表示
同社のサイバー脅威に対する高いデータ分析力はグローバルで評価されており、世界経済フォーラム(WEF)の「テクノロジー・パイオニア2023」に選定されたほか、マイクロソフトへのデータ提供やインターポール(ICPO)の韓国唯一の公式パートナーを務めるなど、国際社会の安全保障強化に貢献してきた。
競合ひしめく日本への参入理由と独自の優位性
そのような実績を持つS2Wが今回日本市場への本格参入を決断した背景には、日本国内におけるサイバーセキュリティへの関心の高まりと、それに伴う切実なニーズの顕在化がある。
S2W 最高製品責任者(CPO)のキム・ジェギ(Kim Jaeki)氏(写真1)は、次のように振り返る。「これまで日本国内の様々なセキュリティ展示会やイベントに参加してきました。競合となるグローバルのサイバーセキュリティ企業がすでに多く参入しているにもかかわらず、日本の政府機関や組織からは驚くほど多くの相談が当社に寄せられました。既存のソリューションでは満たせないニーズがあると判断しました」
写真1:S2W 最高製品責任者(CPO) キム・ジェギ氏また、同社には公的機関や法執行機関とサイバー犯罪捜査などを行ってきた経験がある。「当社は、インテリジェンスが実際の捜査や防衛においてどのように役立つのか、その具体的な使い道を熟知しています。この点が、他社に対する大きな競争力になっています」(キム氏)
さらに、日本市場参入における最大のトリガーとなったのが、日本政府が進める能動的サイバー防御(ACD)の法制化への動きだ。法案の発議などを契機に、日本国内のセキュリティに対する成熟度と関心は急速に高まっている。さらに、サプライチェーンを狙ったサイバー攻撃の制度化・義務化が進む中で、SBOM(ソフトウェア部品表)の管理や、資産の脆弱性を先んじて識別・管理する取り組みが必須要件となりつつある。
「当社は以前から資産の脆弱性の識別・管理を行い、攻撃者が悪用する前に脆弱性を潰す技術を保有しており、現在の日本市場の需要を高いレベルで満たすことができると判断しています」(キム氏)
●Next:アジアでランサムウェア被害件数が多い日本と韓国──なぜ狙われるか
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