[インタビュー]

イノベーションは「アップグレードありき」ではない─既存のERPを生かしたAI変革を支援

米リミニストリート CEO セス・ラヴィン氏

2026年8月7日(金)齋藤 公二(インサイト合同会社 代表)

ERPソフトウェアのサポート終了への対応は、ユーザー企業にとって頭の痛い問題だ。現行の業務システムが問題なく稼働している場合、一般にアップグレードの必要性は低く、プロジェクトはリスクにもなり得る。AIを含む新たなテクノロジーの活用は移行の動機となり得るが、多額の費用をかけて移行しても、現行システムと同じ機能を実装し直すだけにとどまることもある。そんななか、コスト削減とイノベーションの両立を目指すアプローチを提唱しているのが、第三者保守で知られる米リミニストリート(Rimini Street)だ。同社 CEOのセス・ラヴィン氏に話を聞いた。

大規模なERPシステムのアップグレード自体がリスクを伴う

──メーカーのサポート期限を迎えたソフトウェアについて、第三者保守サービスを展開する企業として知られています。あらためてサービスの特徴を教えていただけますか。

セス・ラヴィン(Seth Ravin)氏写真1):SAPやOracle、VMwareなどのソフトウェアの特定のバージョンがサポート期限を迎えた場合、通常はベンダーが推奨する新しいバージョンへとアップグレートする必要があります。アップグレードしなければ公式のセキュリティ修正プログラムや新しい機能の提供がなくなるため、そのソフトウェアを使い続けることがビジネスリスクになります。ただ、現状で何の問題もなく動いているソフトウェアをわざわざアップグレードせずにそのまま使い続けたいという企業は少なくありません。

 当社はそうした企業をサポートしています。例えばSAPは、「SAP ECC 6.0」を「SAP S4/HANA」にアップグレードすることを推奨していますが、我々はECC6.0のまま、安全に既存ビジネスを継続できるようサポートサービスを提供します。ECC6.0については15年間サポートできます。

写真1:米リミニストリート CEOのセス・ラヴィン氏

──古いソフトウェアを使うことでセキュリティリスクが増えます。また新機能が利用できないことはイノベーションを阻害するとも言われています。

 サポートサービスは、セキュリティリスクを放置したままシステムを延命するものではありません。各ソフトウェアの専門知識を持ったエンジニアが、業務プロセスレベルからシステムや安全性、可用性などに問題がないかを確認し見直していきます。その際には「Smart Path(スマートパス)」という当社独自のアプローチを使います(図1)。スマートパスは既存の業務プロセスを含めてシステム構成を見直し、必要ないものを削減して、それによって得た原資をイノベーションやモダナイゼーションに振り向けるアプローチです。

図1:Smart Pathの概要(出典:日本リミニストリート)
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 顧客はサービスを受けるために多額の費用を用意する必要はありません。また、イノベーションやマイグレーションのための原資を取り組みのなかで生み出していきます。コスト削減とイノベーションの両立を目指すのです。

 そもそも、ここまで大きくなったERPシステムは、アップグレードすること自体に大きなリスクが内在します。プロジェクトをやり遂げるための人員も不足しています。そうした中で、多額のコストをかけて同じ機能を作り直すことは、効率的とは言えないと考えます。

●Next:既存のERPを生かしながらAI時代に対応する

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