日立製作所は2026年9月10日、製造業の設計業務を支援する「設計ナレッジシステム」を発表した。熟練設計者の経験やノウハウ、過去の不具合情報などの技術文書をAIエージェントが分析し、形式知として一元的に蓄積する。また、3次元形状CADデータを自動でチェックし、設計ルールに違反する箇所を可視化する。
日立製作所の「設計ナレッジシステム」は、製造業の設計業務を支援するAIシステムである(図1)。熟練設計者の経験やノウハウ、過去トラブル・不具合情報などの技術文書をもとに、暗黙知を形式知化する。テキストや図表から設計ルールを自動抽出し、設計ナレッジとして一元的に蓄積する。
図1:設計ナレッジシステムの概念図(出典:日立製作所)拡大画像表示
特徴は、製造業としてモノづくりを実践してきたノウハウを生かし、「穴の取得関数」や「曲げの取得関数」「距離測定関数」などを実行する独自の形状認識関数を、あらかじめデータベース化してシステム内に組み込んでいることである。
この関数群と生成AIを連携させることで、設計者が入力した自然言語のルールから形状チェック用のプログラムを自動生成する。これを使って3次元形状CADデータを自動チェックし、設計ルールに違反する箇所を可視化する。
背景として製造業の設計現場では、熟練者の経験や技術文書、過去の不具合情報、3次元CADデータなどの情報をもとに判断を下しているが、こうした知見は担当者ごとに分散・属人化しやすい。ルールの確認作業に工数がかかるほか、確認漏れによる手戻りや品質のばらつきが生じる。
グループ会社の日立ハイテクが、プロトタイプを使って先行検証した。板金・製缶図面の検図作業に適用したところ、曲げ加工や打ち抜き・切断加工が困難な箇所、寸法不備などを自動で100%抽出できた。不具合のある設計データが後工程に流出する回数を減らせた。
日立製作所は2026年4月から品質保証業務向けに「品質ナレッジシステム」を提供しており、今回は設計業務向けにあたる。今後も、設計から製造、保守、品質保証までの業務全般を対象にサービスを拡充する。
例えば、設計者の操作・判断履歴をもとにナレッジを自動的に蓄積・拡張する仕組みや、設計データから製造BOM(部品表)やBOP(製造工程表)を自動生成する機能、類似形状の高速検索によるバーチャル試作検証などの開発も視野に入れる。将来的には、現実世界の事象をデジタル技術でつなぎ自律的な判断・制御を行う「フィジカルAI」領域への展開も見据える。
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