[エンタープライズ・システムのためのWeb 2.0]

住友電工における企業内システムの変革とエンタープライズ2.0

住友電工情報システム ビジネスソリューション開発部長 谷本收氏

2007年9月16日(日)谷本 收

住友電工情報システムのエンタープライズ2.0への取り組みについて説明する前に、まずその前身となるはずのエンタープライズ1.0がどんなもので、いつ頃のことだったのかについて考えてみたい。そもそもエンタープライズ2.0は、ウェブ2.0のテクノロジーをエンタープライズ(企業)のシステムに取り込んだものとされている。それなら、エンタープライズ1.0はウェブ1.0、つまり従来のウェブテクノロジーを取り込んだものと捉えられるだろう。

エンタープライズ1.0とエンタープライズ2.0

住友電工のエンタープライズ2.0への取り組みについて説明する前に、まずその前身となるはずのエンタープライズ1.0がどんなもので、いつ頃のことだったのかについて考えてみたい。

そもそもエンタープライズ2.0は、ウェブ2.0のテクノロジーをエンタープライズ(企業)のシステムに取り込んだものとされている。それなら、エンタープライズ1.0はウェブ1.0、つまり従来のウェブテクノロジーを取り込んだものと捉えられるだろう。

ほかにもエンタープライズ1.0の定義にはいろいろな考え方があるが、ここではウェブ化された情報システムをエンタープライズ1.0とみなし、当社、住友電工情報システムの情報システムがエンタープライズ1.0から2.0へと変化してきた過程から、エンタープライズ2.0の実体と可能性について探っていく。

図 1 エンタープライズ1.0と2.0の関係

エンタープライズ1.0+αへの道のり

1997年以降のウェブシステムの導入により、エンタープライズ1.0のシステムの構築が始まった。当時の社内システムについて、情報系システム、基幹システム、開発プラットフォームの3つに分けて紹介する。

情報系システム

情報系システムでは、まず1998年に全社ウェブ電子会議室「WebMeeting」を自社開発した。これはそれまで利用していたtelnetベースのBBSを再構築したもので、全社や部門内での通知や意見交換など、情報共有のインフラとして機能するものとなっている。また、重要な情報は、メールで通知してくれる機能も備えている。

続いて、1998年に部門内の文書管理や情報共有の機能を備えた「楽々Document」を自社開発した(これは製品として販売された)。これはISO文書の管理を目的としたシステムで、文書作成者/参照者がわかるだけでなく、コメント機能や既読/未読の管理機能を備えており、情報の浸透度を測るための目安とできることも目標としていた。これは、数百名から千名までの事業部門内情報共有としては一定の成果を収めた。

さらに、2004年には全社での知識共有サーバーとなる「ナレッジ・ポータル」を自社開発し、全社共通の文書管理に利用した。登録されている文書をアクセス頻度順に表示するといった機能のほか、後述する自社開発のユーザー管理ツールを利用したシングルサインオンや、検索エンジンで文書の検索も行えるようになっていた。

これ以外にも、2003年にはパーソナライズ機能を備えた「社内ポータルサイト」も自社開発し、スケジュール管理と電話帳をメインに利用している。

基幹システム

基幹システムでは、ユーザー管理、ワークフロー、帳票出力といったサービスを提供するSOA的なサーバーを共用して利用している。

グループ内の全従業員のメールアドレスやユーザーIDは「グループユーザー管理システム」で管理され、メールシステム、電子申請システムやシングルサインオン管理システムの基盤となる。

また、基幹情報システムと連携する形で「楽々Workflow Ⅱ」を自社開発し、各種起案や稟議といったグループ内の電子申請システムも提供した。

図 2 SOA的共用サーバー

開発プラットフォーム

開発プラットフォームでは、1999年にLinux/Javaの全面採用に踏み切った。PC上で動作するLinuxの採用によりハードウェアにかかるコストを削減でき、Javaの採用によりアーキテクチャに依存しない開発ができるようになった。当時は、Visual Basicを使いたいという声もあったが、ここまでは例外を認めずにLinux/Javaで開発してきた。

そして、2005年に最後までオープンソース化に踏み切れずにいた部分であるデータベースを、オープンソースのデータベースソフトウェアであるPostgreSQLに切り替えた。

こうして10年の歳月を経て、住友電工情報システムの開発プラットフォームはオープンソースソフトウェアに切り替えることができた。これにより、現在は開発にあたって購入が必要なソフトウェアは、OS(SUSE Linux Enterprise Server)だけとなっている(フレームワークである楽々Framework IIは有料だが、自社製品であるため購入コストがかからない)。

図 3 オープンソースソフトウェアによる開発プラットフォーム

エンタープライズ1.0+αがもたらしたもの

エンタープライズ1.0+αによる社内システムのウェブ化は、主に2つの利点をもたらした。1つはブラウザやメールクライアントだけで業務を行えることと、クライアントPCの管理工数を削減できたことによる「TCOの削減」。もう1つは、進歩の早いインターネット技術を採り入れることによる「最新技術の導入の容易さ」がある。

導入当初は入力の操作性の悪さを指摘する声もあったが、導入率がある程度の割合を越えたころから、ウェブシステムのほうが主流となり、現在ではウェブシステム以外のシステムのほうが違和感を覚えるほど定着している。

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