エンタープライズ2.0企業導入の課題はどこにある? 活用に向けて徹底議論
2007年10月4日(木)IT Leaders編集部
情報増大という状況に対応するために、それを解決するソリューションとしてコミュニケーション、コラボレーションツールとしてブログ、SNSが、膨大な情報から必要な情報を抽出するための手段としてエンタープライズサーチが、より開発速度の向上、低コストの開発、個人レベルでの多様なツールの選択という観点から、マッシュアップといったソリューションが検討されている。2007年8月1日に開催されたインターネット協会 エンタープライズ2.0研究部会 エンタープライズ2.0セミナーのパネルディスカッションの模様をお届けする。
テーマ:エンタープライズ2.0企業導入の課題
- 組織・ワークスタイルの変化
- 既存ITインフラとの関係
- コスト・収益への影響
パネリスト
- 住友電工情報システム 代表取締役 岩佐洋司氏
- 日本電気 マーケティング本部 川井俊弥氏
- リアルコム 取締役 吉田健一氏
モデレーター
- インプレスR&D エンタープライズ2.0 Forum 土屋信明
エンタープライズ2.0と組織・ワークスタイルの変化
土屋:情報増大という状況に対応するために、それを解決するソリューションとしてコミュニケーション、コラボレーションツールとしてブログ、SNSが、膨大な情報から必要な情報を抽出するための手段としてエンタープライズサーチが、より開発速度の向上、低コストの開発、個人レベルでの多様なツールの選択という観点から、マッシュアップといったソリューションが検討されています。
しかし、一方で、ブログとグループウェアの導入効果の違いは何なのか、マッシュアップとウェブのリンクの機能的な違い何であるのか、といった素朴な疑問も存在します。エンタープライズ2.0の定義にはさまざまな意見は存在すると思われるが、本日のセミナーの内容から推察するに、ブログ、SNS、サーチ、マッシュアップといったサービスは一般のインターネット環境では一般的なものになり、「参加」のメカニズムや膨大な情報の中から必要な情報を用意に探し出す手段が提供されている。
こうしたテクノロジーが企業内に入っていくであろうことを多くの人が感じるようになっている。これがエンタープライズ2.0を意味しているのではないでしょうか。そのときに、エンタープライズ2.0と呼ばれる技術が企業に入っていくときのメリットは何なのか、リスクは何なのか、といったことを考えていきたいと思います。
吉田:本日のセッションにおいても、組織・ワークスタイルの変化という点については、皆さん課題にされていたと思います。もともとウェブ2.0のツールというのは、ITコンシューマライゼーションの中から生み出されています。導入に際してもITベンダー主導ではなくエンドユーザー主導で企業内に導入されるケースも多いようです。
図1:ITコンシューマライゼーション
また、プレゼンテーションの最初の組織の図でもご覧にいれたように、階層的なものではなく、ネットワーク型の個人と個人の間のつながりを前提に作られたものですので、一般の企業の組織はピラミッド型であるため、そこに不整合があるのは否定できないことだと思います。
図2:ネットワーク型の組織形態
パイロットアプローチで徐々に組織内に普及していく
それでは、どのように解決していくのかというと、これにはいくつかのやり方があります。1つは、パイロットアプローチと呼んでいるものです。いきなりピラミッド型の組織をネットワーク型に変えることはできないが、一部の組織はすでにネットワーク型で機能しているところ、たとえば、勉強会であったり新製品開発であったりと、ネットワーク型のところに適用していくという方法です。ピラミッドの中にネットワーク型の組織が一部混在する形で、ツールの利用効果が認知されるとともに、徐々に組織の中に普及していくというものです。
セッションの中で第一、第二、第三の組織といった話をしましたが、会社の中には、いろいろな場があります。すでに第一の組織、第二の組織は存在しており、これから第三の組織をいかに構築していくかというところだと思います。ネットワーク型の組織に徐々に変えていくというのが適切な方法ではないでしょうか。
図3:コミュニティは第三の組織形態
また、顧客の方々と話していてよく出てくるのが、ブログとかWikiとかSNSといったものはツールとしてはいいのかもしれないが、会社の社風があまりオープンではないので、導入してもなかなかナレッジが出てこないからやめておこうというということがあります。
しかし私はまったく逆だと思っています。風土やワークスタイルは何もしなければ変わるはずはないので、エンタープライズ2.0のツールを導入してみると、そこにユーザーが食いついてきて、そこから何かが変わっていくという引き金になる可能性も大きい。旧来のワークスタイルの方々もそういう人たちの影響を受けつつ、少しずつネットワーク型に変わっていくのが、よいのではないかと考えています。組織がピラミッド型だから導入しないというのではなく、ピラミッド型だからこそ導入する価値があるのだと思います。
図4:エンタープライズ2.0の位置づけ
住友電工情報システムの全社Web電子会議室
岩佐:さきほど、谷本が使用しましたページの20ページを参照いただけますでしょうか。ここで1998年にDBベースあるいはWebベースでやってきた電子会議室、双方向で処理ができるようなシステムを作っています。このシステムはすでに10年以上稼働しています。
図5:住友電工情報システムにおける全社Web電子会議室(WebMeeting)
技術的にはウェブだとかブログなどを使っていますが、基本的な考え方は変わっていません。社内でもか喧々諤々の議論をしていますが、結局フラットな組織にできるかどうか、わたくしどものようなB2Bの企業では、フラットにしてできるわけがないというのが結論でした。となると、技術はブログやWikiといったものを使ったとしても、セキュリティの観点からも、アクセスについては制限を設けるのが妥当だろうと判断しています。
図6:Web2.0技術の適用(1)
最初は、小さな組織で小さな成功を収めていくことから始めるのがいいでしょう。フラットな組織として可能性があるのは、たとえば、研究部門であったり、情報システム部門が挙げられるでしょう。ところが、部門間を越えるとなると、とたんに問題が難しくなってしまいます。たとえば、研究部門でやっていることを、他の事業部門には公開したくないといったことは往々にしてありますので、技術は新しいものに取り組みながらも、アクセス権限などは従来のものを適用する。そして小さなフラットな部門から始めるというのがよいのではないかと思っています。
情報共有の場では、共有している情報が正しいのかどうかということは、いつも議論になります。その道のエキスパートやキーパーソンがモデレートする必要があります。会社が内容をチェックするというやり方よりも、ブログやWikiやSNSなどの主催者がしっかりした人を選ぶことが重要なのではないでしょうか。
ワークスタイルはどんどん変わっているとはいっても、なかなか会社の風土を変えることはそれほど簡単なことではありません。まずは単独の部門からはじめ、部門間にしましても、アクセス権限を考慮に入れながら営業と開発部門がやるというアプローチにしていくという考え方をしています。
図7:組織・ワークスタイルの課題
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