業務アプリケーションは今後、どのような方向に進化していくのか-。そのヒントを得るために、本誌は米ガートナーリサーチのビジネスアプリケーション&プロセス担当リサーチ・バイス・プレジデント、ジェフ・ウッズ氏に意見を聞いた。氏は、都内で開催する「Gartner Symposium/ITxpo 2009」(2009年11月11~13日)に合わせて来日中で、11月13日に取材に応じた。
ウッズ氏が今後の動きとして指摘したのは、(1)組み込み型分析と(2)モデル主導型パッケージアプリケーションの2つだ。
(1)は、アプリケーションのトランザクション自体に分析機能を組み込むもの。「従来も業務アプリケーションに分析システムを統合する取り組みはあったが、異なるシステムの分析機能を統合するまでにとどまっていた。組み込み型分析は、トランザクションを担うコンポーネントが直接分析基盤を利用する仕組みで、業務アプリケーションと分析システムの統合を一歩進めた形になる」(ウッズ氏)。
ウッズ氏は組み込み分析の具体例として、製造業における在庫引き当ての例を示した。「2社の顧客が同時に1つの商品を注文してきた場合を例に考えよう。商品の在庫が1つしかない場合、従来の業務アプリケーションでは、在庫テーブルを参照し、どの顧客に在庫を割り当てるかを考えるだけだった。一方の組み込み型分析では、様々な要件をリアルタイムで分析・比較して、2社の利益率を勘案し、どちらの客に引き当てるべきかを決定できる。さらに、在庫を得なかった場合にどちらの客が大きな影響をうけるかといった、より深いレベルの分析まで可能になる」(ウッズ氏)。
あわせてウッズ氏は、組み込み型分析の導入には、現在のプロセスの多くをリエンジニアリングする必要があると指摘する一方、採用後のビジネスバリューは、経営陣に即座に明確になるだろうと語った。
(2)は、図で描いたビジネスプロセスモデルとルールエンジンを実装し、これを操作するだけでアプリケーションを構築可能にしたものだ。事業部門がPowerPointなどでビジネスプロセスモデルの図を描くと、それが即座に実行可能なアプリケーションとして生成でき、中間のプロセスが省略できる。「現在のパラメータ化されたアプリケーションの実装は、まず業務部門がビジネスプロセスを図で描き、次にビジネスアナリストが図からアプリケーションのパラメータに変換し、アプリケーションを開発するという流れが主流。中間要素が増えるため、アプリケーション開発にエラーやサイクルタイムが起こりやすくなる原因になっていた」(ウッズ氏)。
ウッズ氏は、業務アプリケーションの売り上げ全体に占めるモデル主導型パッケージアプリケーションのシェアが2013年までに世界で25%を占めるようになると推測。オラクルが2010年の投入を予定している「Oracle Fusion Applicarions」はモデル主導型を採用していると語り、SAPも追従するだろうとの見方を示した。