[イベントレポート]
データ分析用のクラウドを初披露、DWHの先進事例も話題に─Teradata PARTNERS 2009
2009年12月2日(水)IT Leaders編集部
今年で24回目を迎える「Teradata PARTNERS 2009」は、テラデータのユーザーが主体となって企画・運営するカンファレンスだ。データウエアハウス(DWH)に関する最新技術/製品の情報を得られるほか、先進的なユーザー事例を学べる場として注目され、今年は3000人近くの参加者が米ワシントンD.C.に集まった。
[基調講演] データマート統合効果を強調
今年のテーマは「accelerating INSIGHT」。データ分析を通じた洞察力を強化して企業の収益力を高めようというメッセージが込められている。そのための手段としてテラデータでは、様々なデータを統合/一元化して管理するDWH「エンタープライズデータウエアハウス(EDW)」を提唱。ビジネスの現場で発生する明細データを蓄積し、必要な人に必要なデータを提供しようというアプローチだ。基調講演ではCEOのマイク・コーラー氏がEDWの優位性について力説した(写真2-2)。
DWHでは一般に、分析する目的や内容ごとに複数のデータマートを構築、活用するケースが多いが、コーラー氏はこうしたデータマート構造に疑問を投げかける。「複数のデータマートが存在するとデータは重複して各データマートに蓄積され、データの整合性を保証できなくなる。異なるデータは異なる分析結果をもたらすため、企業の意思決定に支障を来す。40〜60%ものデータが重複している事例もよく見かけるが、この場合はデータマートの肥大化や保守費も問題となる」と指摘。これに対しEDWはデータを1つのデータマートに集約する。「重複データを排除できるため保守費を低減するほか、データの一貫性を確保。ユーザーは同じデータマートから同じ分析結果を得ることができる」と利点を強調した。
基調講演に先立ち行われたCTOのスティーブン・ブロブスト氏のセッションでは、日曜日の朝8時からという時間にもかかわらず、多くの参加者がその内容に耳を傾けた。ブロブスト氏はデータの品質について言及。「データは企業の意思決定を左右するだけに、信用に足る高い品質が求められる。不完全なデータをどれだけなくせるかが大事」とし、「複数のデータマートの保守に費用をかけるくらいなら、データの品質保持のために費やすべき」と参加者に訴えた。「DWH構築後も継続してデータの精度や鮮度を高めていく努力が必要」と、怠りがちなデータ品質管理の重要性を説いた。
[ユーザー事例] 日本企業4社が事例を紹介
PARTNERSでは200を超えるセッションのうち約80がユーザーの事例紹介となっており、金融や流通など様々な業界におけるDWH構築・運用の体験談を聞くことができた。バンク・オブ・アメリカやティンバーランド、アメリカン航空などといった名だたる企業のほか、日本からは楽天、JCB、ふくおかフィナンシャルグループ、京王百貨店の4社が自社の導入事例を紹介した。
楽天市場や楽天トラベルなど様々なインターネット事業を展開する楽天は、異なる事業の会員情報や利用状況といったデータを集約して分析するシステム「楽天スーパーDB」を構築。その導入効果を紹介した。開発部グループプラットフォーム開発・運用課長の景山均氏は、「会員属性を分析し、どのサービスをどの会員がよく利用するのかを洗い出した。このデータをもとに会員がアクセスしてくる当社サイトのページに、その会員がよく利用するサービスのバナーを表示するように改修。この結果、会員が2つ以上のサービスを利用する割合が、2年間で31.4%から38.2%に上昇した」と効果を説明した。
京王百貨店も、どの商品がどんな顧客層でよく売れているのかなど、主にマーケティング業務での活用を想定したシステム構築を進めてきた。その一方で、システムを利用する社員の教育にも注力。具体的には、販売員やバイヤーなどの役職に応じて、データを活用するためのマニュアルを作成し、情報活用の促進を図った。さらに、データ分析の効果を検証したり、データについて意見を出したりする人を売り場担当者の中から53人選出。現場の声を聞き、売り場担当者が本当に必要とする情報を適切に提供できるようにした。営業企画部部長の保坂俊一氏は、「顧客に対してどのようなアプローチをすれば商品を購入してもらえるかを社員が自ら考えるようになった」とし、「仮説に基づき行動し、問題解決を試みる自主性が生まれた」と社員の意識が変わってきていることを強調した。
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