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国際医療福祉大学、ファイル転送サービスを大学間データ共有に活用

2009年12月25日(金)IT Leaders編集部

国際医療福祉大学(本部所在地:栃木県大田原市)など7大学は、大学間のデータ共有にファイル転送サービス「e・パーセル電子宅配便サービス」を活用している。導入の容易さとセキュリティの高さに目を付けた。(Photo:辻本英二)

国際医療福祉大学大学院院長で医療福祉学研究科長を勤める開原 成允氏 国際医療福祉大学大学院院長の開原成允氏 国際医療福祉大学情報教育センター長の外山 比南子氏 国際医療福祉大学情報教育センター長の外山比南子氏

 医師などを除く医療従事者であるコメディカルの育成機能を擁する国際医療福祉大学と北海道情報大学、藤田保健衛生大学、鈴鹿医療科学大学、川崎医療福祉大学、広島国際大学、東亜大学の7大学は共同で、教育のための大学間連携プロジェクトを推進している。プロジェクトの中心となるのは、教育用電子カルテシステムの構築だ。

 同プロジェクトの代表校である国際医療福祉大学のほか3拠点に電子カルテシステムのサーバーを設置。実際の患者の診療記録を元にした模擬電子カルテや実習用のビデオ教材などを蓄積し、各大学からネットワーク経由でアクセスする仕組みだ。「単独でシステムを開発するより、共同で開発した方が効率が良いと判断した」(同大学情報教育センター長の外山 比南子氏)。

 システム構築で最大の課題となったのは、模擬データの通信基盤の整備だった。同大学の大学院院長で医療福祉学研究科長を勤める開原 成允氏は、データ通信基盤の採用にあたって(1)セキュリティの確保、(2)大容量データを転送できること、(3)国際間で安定した通信ができること、という3点を重要視したという。いずれも教育用途だけではなく、実際の病院間データ通信への適用も想定した要求だ。

 電子カルテには症例などの重要な個人情報が含まれており、セキュリティには十分な配慮が必要だ。またMRIやCTといった医用画像はファイルサイズが数百メガバイト以上になるため、大容量データを効率的に送受信できることも必須要件となる。さらにアジアを中心に患者が海外の医療機関を利用する流れが広がる中、国や地域による通信環境に影響を受けない仕組みも必要だと判断した。

 候補として、専用線の敷設やPKIによる認証基盤構築が挙がった。だがプロジェクト関係者内でインターネット回線を利用したいという声が多かったため、専用線の採用は断念。一方のPKIでは、認証に医療従事者であることを証明する仕組みがないことが課題となった。厚生労働省が規定する、医療関連資格の証明機能を備えた「HPKI」であればその課題は解決できるものの、認証局構築や証明書導入などの負荷がネックとなっていた。

 導入の負荷が少なく、かつ高度なセキュリティを確保できる通信手段はないか―。いくつかの方法を検討し、最終的にはイーパーセルのファイル転送サービス 「e・パーセル電子宅配便サービス」の採用を決めた。セキュリティ機能を盛り込んだ独自プロトコルによる通信や、メールアドレスによる個人認証の容易性を評価した。「他のファイル転送製品・サービスも検討したが、医療データのやりとりに利用できるセキュリティ水準に達していないと判断した」(開原氏)。送信途中で回線が遮断された場合に自動で処理を再開する仕組みを備え、大容量ファイルを回線の細い地域に効率よく送信する仕組みを持つ点も評価。システムは2009年10月に本格稼働を開始し、100人程度が利用しているという。

 今後は同大学が事務局を持つ日本DPC協議会の加盟病院とのファイルのやり取りにもサービスの活用を広げる考えだ。患者の病気に基づく診療報酬制度であるDPC(包括的診療報酬制度)を病院が適用するには、専用フォーマットに基づいた大量のデータを厚生労働省に提出することが必要になる。

 同協議会では加盟病院からのDPCデータファイルを収集している。従来はファイルをCDやMOで郵送してもらい、手作業でファイルサーバーに登録していたため手間がかかっていた。現在は1つの病院との間でトライアルを実施中で、「他病院から送信されたファイルを指定したフォルダに自動で蓄積できるため、作業負荷が大幅に軽減できた」(外山氏)といった効果が現れているという。

(修正)冒頭、「医師や看護師を除く医療従事者であるコメディカルの育成機能を擁する国際医療福祉大学と…」としており、国際医療福祉大学に看護師の育成機能がないと捉えられる可能性のある表現となっていたため、表現を一部訂正いたしました(国際医療福祉大学には看護師育成機能があります)。本文では修正済みです。(2009年12月28日午前9時35分)

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