HPが3PARを獲得したのをはじめ、デルがCompellent、IBMがStorwizeをそれぞれ買収するなど、ストレージ関連業界の再編が続く。そうしたなかEMCは2011年1月18日、シンガポール拠点において新製品発表会を開催。最大手の矜持を見せた。
EMCが今回、シンガポール拠点において開催した新製品発表会で発表したのは41の新製品と機能。以下で、主要なものをピックアップしてお伝えする。
最も注目すべきは、新たなミッドレンジ製品群である「VNX」だ。これまでEMCのミッドレンジと言えば、SAN接続の「CLARiX」と、統合NAS「Cele-rra」の2本立てだった。VNXは、これらを置き換える新たな統合ストレージ製品群である。ファイバチャネル、FCoE、iSCSI、CIFS/NFS、pNFS、MPFSをサポートし、企業のストレージ統合を支援する。ただし、最下位機種がサポートするのはファイバチャネルのみである。VNXの投入により、EMCは「大企業向け」「高価格」というイメージを払拭。顧客層を拡大する構えだ。
そんな方向性をさらに鮮明に示すのが、中堅・中小企業向けストレージ新製品の「VNXe」である。エントリー機は1万ドル以下という価格設定で、これまでストレージを使ったことがない企業に訴求していく。運用管理の容易さも特徴だ。Unisphereと呼ぶ運用管理ツールを無償で提供。ストレージだけでなく仮想マシンやボリュームといったリソースの割り当て状況を、直感的に把握できるようにした。
磁気テープを「過去の遺物」へ
主力のハイエンド機「Symmetrix VMAX」に施した機能強化も見逃せない。「FAST VP(Fully Automated Storage Tiering with Virtual Pools)」と呼ぶ自動階層化機能を搭載。最小768キロバイト、最大380メガバイト単位でのデータ移動を可能にした。従来機では論理ユニット単位でしかデータを移動できなかった。アレイ間のデータ移行を無停止で実現する「Federated Live Migration」も実装した。これにより、データ移行にかかる時間を従来機に比べて最大75%削減できるという。
バックアップ製品群も拡充。性能を大きく向上させた「Data Domain DD890」「同DD860」を発表した。スループットは、DD890が最大14.7テラバイト/時、DD860は9.8テラバイト/時。論理容量はDD890が最大14.2ペタバイト、DD860が最大7.1ペタバイトである。さらに、アーカイブ用途に特化した「Data Domain Archiver」をラインナップに追加。根強く残る磁気テープ市場の切り崩しを狙う。
情報管理から活用まで全面支援
EMCは2009〜2010年、バックアップ大手のData Domain、スケールアウト型ストレージのアイシロン・システムズ、DWHアプライアンスのGreenplumを立て続けに買収した。それら買収先の製品を今後、どのように売り分けていくのか。説明会では、最新の製品ポートフォリオも明らかになった(図)。
VMAXやVNX、VNXeはERPやメール、コンテンツマネジメントといったエンタープライズ・アプリケーション領域をターゲットにする。一方、動画やCGの編集/レンダリング、遺伝子配列といったアプリケーションが生み出す“ビッグデータ”を扱う領域には、2008年から提供中のクラウド型ストレージ「Atmos」と、旧アイシロン製品を適用する。バックアップやアーカイブ領域は、Data Domainと重複除外ツール「Avamar」がカバー。加えて、GreenplumのDWHアプライアンスは、蓄積したデータを分析するためのフロントマシンという位置づけとなる。 (力竹)
アプリケーション領域 |
エンタープライズ・アプリケーション |
ビッグデータ・アプリケーション |
---|---|---|
蓄 積 | VMAX、VNX、VNXe | Atmos、Isilon |
分 析 | Greenplum | |
バックアップ | Data Domain、Avamar |
(修正履歴2011年3月8日14:14)Symmetrix VMAXのFAST VPに関する説明について、当初「最小8メガバイト、最大380メガバイト単位でのデータ移動を可能にした」としていたものを、「最小768キロバイト、最大380メガバイト単位でのデータ移動を可能にした」と修正いたしました。本稿は修正済みです。