[ユーザー事例]

迅速な事業拡大にERPは不可欠、ベンダーは一層の情報開示を─ERPユーザー座談会

今、改めてERPの価値を見直す Part1

2011年7月12日(火)川上 潤司(IT Leaders編集部)

ERPパッケージが日本に上陸して15年ほど。その間、導入企業における活用はどこまで進んだのか。 課題があるとすればそれは何か。先進企業のITリーダー3人に語ってもらった。(聞き手は本誌編集長 田口 潤 Photo 陶山 勉)

石野 普之 氏
石野 普之 氏
リコー IT/S本部 IT/S企画センター 所長
1984年、リコーに入社。99年まで主に社内の設計支援システムの企画、開発運用に携わる。2000〜2008年、米国統括販売会社における基幹システムの企画・開発・運用を担当したほか、業務改革の推進をリードした。2009年1月に帰国後は、グローバルITガバナンスやIT戦略を担当している。

 

杉山 泰久 氏
杉山 泰久 氏
富士フイルムコンピューターシステム 業務部 業務統括グループ グループ長
1977年4月、富士写真フイルムに入社し、電子計算部に配属。 1998年7月、システム部門が機能分社した富士フイルムコンピューターシステムに移籍し、富士フイルムのITインフラからアプリケーション開発・構築まで幅広く担当。ERP導入や内部監査などの取り組みに従事している。米国駐在経験もある。

 

大日 健 氏
大日 健 氏
ゴルフダイジェスト・オンライン 上級執行役員 システム戦略担当(CIO)
1993年、日経BP社入社。広告営業に従事。2003年4月、シーネットネットワークスジャパンの立ち上げに参画。営業商品開発やメディア開発を担当し、2005年1月に社長就任。2008年3月、ゴルフダイジェスト・オンライン入社。システム部門担当執行役員、COOを経て、2010年1月に上級執行役員 CIOに就任。

 

田口 佳孝 氏
田口 佳孝 氏
ERP研究推進フォーラム 常任理事
機械振興協会・技術研究所に勤務後、日本MDSIや石油探査企業シュルベルジェーを経て、EDSジャパンの立ち上げに参画。製造業担当バイスプレジデントとして、米GMを担当した。その後、日本ガートナーグループ(現ガートナージャパン)を立ち上げ代表取締役を務めた。1996年より現職

 

─ ERP研究推進フォーラムの田口さんとともに、先進ユーザーのERP活用状況を探っていきます。まず導入状況をお聞きしたい。リコーの石野さん、口火を切っていただけますか。

石野: 2001〜2005年、米国の販売統括子会社にOracle E-Business Suite(Oracle EBS)を導入しました。“オーダートゥーキャッシュ”の基幹システムを構築すべく、在庫管理や出荷管理、倉庫管理といった機能を50以上、一気に実装したんです。その後、米国をいくつかの地域に分けて順次展開し、2007年に一段落させました。手組みではなくERPパッケージを選んだのは、相次いで買収した企業をできるだけ早期に統合したかったからです。

─ 本社や国内の関連会社は?

石野: 国内では独自開発のシステムを使い続ける方針です。営業部門の細かい要望に、どこまで応えるかを調整するのは難しいという判断からです。

─ なるほど。では製造部門は。

石野: グローバル共通で、独自システムを利用しています。ただし感熱紙や半導体といった比較的規模の小さい事業の製造部門では、Oracle EBSを使っています。それからグローバル会計もEBSの機能を使っています。

─ 富士フイルムはどんな状況ですか、杉山さん。

杉山: 1997年に、欧州の製造・販売子会社にSAP R/3を導入したのが最初です。本社には2000年に導入し、2007年5月にはバージョンアップも経験しました(4.0からEnterprise)。連結対象である国内外のグループ会社にも順次導入し、239社のうち主要なところ80社に展開し終えました。現在は拠点ごとに置いていたサーバーを仮想化し、米国や欧州、アジア太平洋、中国といった地域ごとに統合する作業を進めています。

─ SAPはどのモジュールを入れているんですか。

杉山: 会計と販売管理、在庫管理が中心で、製造拠点には生産管理モジュールを入れています。一部には人事管理も。

─ 次にゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)の大日さんにお聞きします。本誌連載で毎月お伝えしているように、会計だけでなく、業務システム全体を見直しているんですよね。

大日: ECのフロントシステムやゴルフ場予約、カスタマーサポートといった業務システムを同時に刷新しています。それらの中核となるのが、SAP ERPです。今、まさに移行リハーサルの真っ最中。3日間徹夜です。

─ そんな大変な中、ご参加いただきありがとうございます(笑)。SAPを採用した理由を改めて。

大日: どの業界もそうですが、ゴルフ産業の内需には限界がある。さらなる成長を目指すには、グローバルに打って出る必要があります。そうなると多言語・多通貨に対応したオラクルかSAPに絞られる。最終的には費用面でSAPを選びました。

─ 会計と販売管理、在庫管理、予算管理を導入中ですね。

大日: ええ。稼働前なので使用感は分かりませんが、導入中の苦労話や、「こんなふうに活用したい」という期待はお話しできますよ。

─ 苦労しているんですか。

大日: 大いにしてます(笑)。

機能と業務のひも付けに苦心、ユーザーの反発は過渡的現象

─ では、そこから行きましょう。どんな苦労を?

大日: なにしろ、どんなシステムになるのかテスト稼働までまったく分からなかった。機能は分かるんですけど、どの業務にどの機能がマッチするのか、設定変更で済むのか追加開発が必要なのか、かなり調べても確信を持てない。暗闇の中を走らされている感じです。ERPには試乗会も内覧会もないですから。

石野: 今も同じなんですね。私も苦労したので、その点は理解できます。ERPパッケージ導入は私にとって、というかリコーグループにとって初めての取り組みでしたから、分からないことだらけ。何にどれくらい工数がかかるのか、開発前には見当も付かない。コンサルティング会社の見積もりが適正かどうかすら、自分たちでは判断できませんでした。

─ 相手に言われるがままだった?

石野: 今思えばそうです。本格的な導入の前に、小規模なプロジェクトを試験的に実施すればよかったのかも知れません。でも、それにはライセンスを購入する必要があるし、何より時間がかかります。米国の買収先を早期に統合したかったので、そんな余裕はなかった。

杉山: 導入前や導入中はもちろん、導入後には社内への定着に頭を悩ませました。稼働してしばらくは、「こんな画面でオーダーエントリーを打つの?」とか、本当に不満が多かった。カスタムメイドだった旧システムに比べると、ERPの画面や入力のしやすさはどうしても見劣りしましたから。

─ それでもなんとか定着させた。

杉山: 現場の説得は大変でしたけど。でも、今にして思えば過渡的現象でした。今やSAPの使い勝手が当たり前なんです。以前のシステムを使ったことがない社員も増えていますし。

─ 慣れの問題ということですね。ここで現在の活用状況についてお聞きしたい。ERPの利用が進むにつれて、明確な効果は出ていますか。

杉山: 当社の場合、まずはグローバル在庫の適正化です。

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